岡崎五朗のクルマでいきたい vol.106 ディーゼル車規制の本質

 2月末、深刻化する都市部の大気汚染を受け、ドイツの連邦行政裁判所が、各地方自治体が古いディーゼル車の乗り入れ規制を行うのは合法だという判断を下した。

 このニュースは日本でも大きく報道されたので覚えている人もいるだろう。問題は、ほとんどが「古い」という部分を抜いて伝えていたこと。その結果、多くの人は「ついにドイツでディーゼルが締め出される」という印象をもったはずだ。

 しかし実際に乗り入れ規制の対象となるのは「排ガス規制が緩かった時代の古いディーゼル車」であって、「すべてのディーゼル車」ではない。欧州では’93年のユーロ1をスタートに、ユーロ2(’96年)、ユーロ3(’00年)、ユーロ4(’05年)、ユーロ5(’09年)、ユーロ6(’14年)と、段階的にディーゼル車の排ガス基準を厳しくしてきた。今回の判決の対象となるのはユーロ4以前のモデルで、ユーロ5(’19年以降は規制対象)とユーロ6はいままで通り使える。そこを明確にしないまま、ディーゼル全体をあたかも環境汚染の元凶と印象づけるような報道は大いに問題アリ。むしろこのニュースのポイントは、ディーゼルがダメということではなく、環境負荷の高い古いディーゼル車をいままで見過ごしてきた欧州当局の失策という文脈で理解するのが正解だ。

 幸い、ドイツを引き合いに出し「いまだディーゼル車に税制上の恩典を与えている日本は遅れている」といった勘違い記事は出てこなかったが、間違った報道が大なり小なり、ぼんやりとしたかたちでディーゼル車への向かい風になったのは間違いない。電力事情を無視してEVをエコだと無条件で持ち上げる記事に近いミスリードだと思う。メディアの命はファクトと、それに基づく冷静な分析と正しい解釈を読者に伝えること。小さな事実なんてどうでもいいという姿勢では報道でもジャーナルでもなくプロパガンダになってしまう。最後に日本のディーゼル事情だが、日本はいまから20年近く前にディーゼル車に対する規制を大幅に強化し、環境負荷の高いディーゼルを路上から一掃した。日本の空気が澄んでいるのは、ディーゼル車にいちはやく厳しい排ガス規制を課した見返りなのだ。


SUZUKI XBEE
スズキ・クロスビー

軽じゃないハスラー

 5ナンバーサイズのハスラー。クロスビーを見れば誰もがそう思うだろう。ヘッドライト、グリル、スクエアなフォルム、2トーンカラーなど、ハスラーの特徴を残らず採用していることからも、スズキがハスラーの兄貴分としてクロスビーをつくったことは明白だ。

 聞くと、ハスラーの登場直後から「軽自動車じゃなければ買うのに」という声が多数寄せられていたのだという。ハスラーは大ヒットモデルだが、やはり軽自動車に乗るのは抵抗がある、という人は少なくないようだ。ならばハスラーの兄貴分をつくれば一定の需要が見込めるというわけである。

 とはいえ、軽自動車のメカニズムをベースにつくった小型車が受け入れられないことはワゴンRワイドの失敗でスズキも承知済み。小型車として売るにはやはり中身もきちんとした小型車でなければならない、ということで使われたのがソリオやイグニスと共通の小型車プラットフォーム。これにマイルドハイブリッド機能を備えた1ℓ3気筒ターボエンジンとトルコン式6速ATを組み合わせた。

 実車を見て意外だったのは、ハスラーにあまり似ていないということだった。もちろん前述したような特徴を受け継いでいるため関連性の強さはうかがえるものの、拡幅したボディによって生まれた「デザイン代」をふくよかな曲面に使っているため、濃厚でドッシリした印象が漂っている。僕はスッキリしたハスラーのほうが好みだが、重量感とか立派さとか、そういうものを求める人はクロスビーを気に入ると思う。

 走り出して感じるのはパワーの余裕。1.5ℓエンジン並みのトルクを味わうと、やはり軽自動車とは違うなと実感する。一方で乗り心地はもう少し頑張って欲しい。同じプラットフォームを使うソリオやイグニスにも共通するのだが、荒れた路面でのリアの突き上げが大きい。ここが改善されればハスラーの兄貴分としてより説得力が増すだろう。

スズキ・クロスビー

車両本体価格:1,765,800円~(税込)
*諸元値のグレードはHYBRID MZ/2WD・6AT
全長×全幅×全高(mm):3,760×1,670×1,705
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒直噴ターボ
総排気量:996cc 乗車定員:5名 車両重量:960kg
【エンジン】最高出力:73kW(99ps)/5,500rpm
最大トルク:150Nm(15.3kgm)/1,700~4,000rpm
【モーター】最高出力:2.3kW(3.1ps)/1,000rpm
最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm
JC08モード燃費:22.0km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

HONDA CIVIC TYPE R
ホンダ・シビックタイプR

高性能の追求がもたらした上質な乗り味

 うわ。エクステリアを目にしてちょっと引いた。シビック・タイプRといえば、ルノー・メガーヌRSと「FFニュル最速」を競う生粋の高性能モデル。新型はさらなるパワーアップとシャシー性能の底上げによって、先代を7秒上回る7分43秒8を記録し、FF最速モデルとしての地位を確固たるものにした。このタイムがどれほどのものかというと、ポルシェ911カレラSとほぼ同等である。そう考えれば、巨大なスポイラーや3本出しエキゾーストパイプといった装備は決してこけおどしなんかではない。速く走るために必要な機能装備なのである。と、頭ではわかっているのだが、愛車として購入して日常的に乗ることを想像すると、このデザインはやっぱり解せない。もちろん、この手のデザインを求める人がいるのは理解できる。しかし、もう少し大人っぽいというか、落ち着いたというか、シンプルというか、そんなデザインにできなかったものだろうか。これではスーツを着て乗ったら妙だし、ホテルの車寄せに付けるのも気が引けてしまう。

 タイプRはそんなクルマじゃないよ、と思う人もいるだろう。たしかにFFニュル最速というコンセプトや、パフォーマンスを考えればそうかもしれない。しかし、実際に乗ってみると、洗練された乗り心地に驚かされる。ガッチリしたボディとスムーズに動くダンパーが生みだすドライブフィールに雑味は皆無で、とくに可変ダンパーをソフトにセットしたときの乗り味には濃密な上質感すら漂っている。高性能を追求した結果の上質感。これはメルセデスのAMGやBMWのMにも通じる独特の世界観であり、日本車が苦手としていた領域だが、タイプRは見事にそれをモノにしているのである。この味をやんちゃなスポーツモデルという狭い領域に閉じ込めていたらもったいない。ましてや450万円という価格なのだ。中身はこのままで、落ち着いた外観の仕様をぜひとも追加して欲しい。

ホンダ・シビックタイプR

車両本体価格:4,500,360円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,560×1,875×1,435
エンジン:水冷直列4気筒横置 総排気量:1,995cc
乗車定員:4名 車両重量:1,390kg
最高出力:235kW(320ps)/6,500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2,500~4,500rpm
JC08モード燃費:12.8km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

AUDI R8 SPYDER
アウディ・R8スパイダー

V10サウンドを味わうオープン

 アウディがつくるミッドシップスーパーカーがR8だ。現行モデルは2016年に登場した2代目。とはいえ最近の他のアウディ同様、極端なまでのキープコンセプト型モデルチェンジなので、路上で見かけても新型か旧型かわからない人のほうが多いと思う。まあオーナーであればたちどころにわかるのだろうが、そうでない人にとって新旧モデルを識別するのはなかなか難しい作業だ。

 しかし中身は大きく進化している。ボディにアルミを多用しているのは同じだが、新型ではカーボンも積極的に採用し、軽量化と高剛性を実現。当然ながら液晶メーターを核にした最新のインフォテインメントシステムも搭載している。エンジンは5.2ℓV10。フェラーリやポルシェが次々にターボ化されていくなか、自然吸気の大排気量マルチシリンダーエンジンはR8の大きな特徴だ。

 そんなR8に加わったのがオープンモデルのスパイダーである。気持ちのいい風と光を浴びながら…というオープンカーのお約束もさることながら、オープン化によってエンジンの美味しさを強烈に味わえるようになっているのが印象的だった。ルーフを開け放った際にコックピットに届いてくるV10特有の甲高いサウンドの量と密度は、感覚的にはクローズドモデルの2倍どころじゃない。ルーフを開け放ってワインディングを走っていたら、スパイダーはエンジンの美味しさを100%味わい尽くすためのものなのかもしれないとすら感じた。サーキットでタイムを削り取りたいなら100㎏軽いクローズドモデルを選ぶべきだが、楽しむために乗るならスパイダーを強く推す。オープン化によるボディ剛性の低下に関しても心配なしと報告しておこう。

 そうそう、乗り心地のよさも印象的だった。フェラーリやランボルギーニほどのオーラはないが、その分、周囲からの視線も優しい。毎日乗れるスーパーカーとしてR8の存在価値は大きい。

アウディ・R8スパイダー

車両本体価格:26,180,000円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,425×1,940×1,240
エンジン:5.2ℓV型10気筒DOHC
総排気量:5,204cc 乗車定員:2名
車両重量:1,770kg
最高出力:397kW(540ps)/7,800rpm
最大トルク:540Nm(55.1kgm)/6,500rpm
駆動方式:4WD

JAGUAR E-PACE
ジャガー・E-PACE

街中でも軽快なスポーツカー的SUV

 いまや星の数ほどあるSUVのなか、ビジュアルインパクトの強さという点で、ジャガーEペイスは最高レベルの1台だ。デザインソースになったのは同社のスポーツカーであるFタイプ。単体だとわかりづらいかもしれないが、見比べてみると、顔もお尻も体型もそっくりなのがわかる。もちろん、スポーツカーとSUVではプロポーションが別モノになるのは避けられないけれど、それでもデザイナーが強い意図をもって共通のイメージで仕立ててきたことは明白だ。たとえばサイドウィンドウのグラフィックなどは完全な相似形だし、リアフェンダー周りの膨らみもよく似ている。SUVとしては異例の傾斜角をもつリアウィンドウも、スポーティーなイメージを強めている理由のひとつだ。

 インテリアにも同じことが言える。まずはドライビングポジションがスポーティーだ。いまや多くのSUVは乗用車ベースだが、その場合、低い床に高いシートを組み合わせているためアップライト気味のドライビングポジションになる。その点、イヴォークと共用するEペイスの床は高い。そこに低めのシートを取り付けた結果、足を前方に投げ出して座るスポーツカー的ドライビングポジションができあがった。そのうえでセンターコンソールをFタイプとよく似た左右非対称デザインとし、コックピット感を強めている。まさにアイポイントが高いスポーツカーといったイメージだ。

 試乗したのは249ps仕様。驚くほどの速さの持ち主ではないものの、十分にスポーティーな走りを楽しめる。足は硬めだが尖ったショックはきれいに丸めてから伝えてきてくれるし、コーナリング性能も高い。なにより嬉しいのは、街中でも軽快に扱える全長4.4mというコンパクトなボディだ。全幅が1,900mmあるので車庫の問題はあるものの、それさえクリアになればEペイスは相当に魅力的なモデルである。

ジャガー・E-PACE

車両本体価格:4,510,000円~(税込)
*諸元値はP250ターボチャージドガソリンエンジン
全長×全幅×全高(mm):4,410×1,900×1,650
エンジン:P250ターボチャージドガソリンエンジン
総排気量:1,995cc 乗車定員:5名
最高出力:183kW(249ps)/5,500rpm
最大トルク:365Nm/1,300~4,500rpm
最高速度:230km/h
加速性能0-100km/h:7.0秒
駆動方式:全輪駆動

文・岡崎五朗


Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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