モタスポ見聞録 Vol.39 シリーズ休止中のトレンド

文・世良耕太

上カラー画像2点:「バーチャル・ル・マン24時間」には、50台がエントリー。TOYOTA GAZOO Racingをはじめ実際にWECに出場しているチームが名を連ねる。
下モノクロ画像2点:過去の名レースの無料配信が行われているF1では、アイルトン・セナやニキ・ラウダなど伝説的ドライバーのレースも配信。photo:Classic Team Lotus

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、進行中だったシリーズは休止になり、新シーズンが始まるはずだったシリーズは待ったが掛けられた状態が続いている。

 その間、ファンを飽きさせてはならないと、シリーズごとにさまざまな手を打っている状況だ。採用例が多いのはeスポーツで、F1やフォーミュラE、DTM、インディカー、スーパーフォーミュラなどが仮想現実でレースを繰り広げている。

 本格的なのはル・マンだ。現実のル・マン24時間は1年で最も日が長い時期にあたる6月の第2~3週に開催するのが伝統だが、9月第3週に延期された。ぽっかり空いたいつもの時期に、バーチャルで24時間レースを行おうというのである。その名も「バーチャル・ル・マン24時間」だ。チームは4名で構成し、プロのドライバーは2名以上、シムレーサーと呼ぶバーチャル専門のドライバーは最大2名と規定している。つまり、リアルなレーシングドライバーとeスポーツに慣れたドライバーの混成チームというわけだ。

 レースは6月13日の午後3時(日本時間午後10時)にスタートし、14日の午後3時にフィニッシュする。給油やドライバー交代(最小・最大運転時間が規定されている)が定められているし、車両がダメージを受けた場合はパフォーマンスに影響が出る。昼と夜を再現し、天候の変化も盛り込むという。本誌が発売される頃には終了しているのが残念だが、リアルなル・マン24時間レースと同様の実況体制を組み、ライブストリーミングが行われる。数あるeスポーツのなかで最も大規模なイベントと言っていい。

 YouTubeの公式チャンネルなどを通じ、過去のレースを配信するのもトレンドだ。ル・マン24時間(24 heures du Mans)は’19年のオフィシャルムービーを配信。5月13日に選手権発足70周年を迎えたF1(FORMULA 1)は「F1 Classics」と名づけ、過去の名レースを丸ごと配信している(ハイライト版も用意)。SNSでの反応を見ると、リアルタイムで見ていたファンが当時を懐かしむ例が多い。しかし一方で、話に聞いていたドライバーの実際の走りを目にし、「やっぱりすごかったんだ」と認識する新規ファンもいる。新旧のファンを楽しませるためにも、シーズンが開幕しても続けてほしい取り組みだ。

 F1は現状、当初第11戦に組み込まれていたオーストリアGP(7月6日決勝)で開幕する予定だ。他の多くのシリーズと同様、状況が落ち着くまでは無観客で行う。このようにシーズンは始まっていないが、来季のシート争いは活発化している。火付け役はフェラーリだ。5月12日、フェラーリは突如「S・ベッテルとの契約を延長しない」と発表した。その2日後、ルノーのD・リカルドが来季マクラーレンに移籍すると発表があった。これは伏線で、その直後、マクラーレンのC・サインツJr. のフェラーリ移籍が発表された。ベッテルの離脱発表に端を発した玉突きのようなドライバーの移籍劇はしばらく続きそう。シーズンは始まっていないが、F1はF1らしくダイナミックに動いている。


Kota Sera

ライター&エディター。レースだけでなく、テクノロジー、マーケティング、旅の視点でF1を観察。技術と開発に携わるエンジニアに着目し、モータースポーツとクルマも俯瞰する。

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