岡崎五朗のクルマでいきたい vol.59 芸能人の交通事故

  先日、タレントのつちやかおりさんが交通事故を起こしたというニュースが新聞、テレビ、webで盛んに報じられた。どうやら一時停止を無視した自転車が横から突っ込んできたようだ。多くの事故はドライバーの注意とテクニックで防げるが、なかには今回のように防ぎようのないケースもあるわけで、彼女にとっては不運だったとしか言いようがない。

  そんなことよりも僕が違和感を覚えたのは、大手新聞を含む主要メディアのほとんどがこのニュースを報じたことだ。いくら不倫疑惑のさなかとはいえ…それはちょっとないんじゃないのと。もっとも、これは今に始まったことではない。たとえ軽微な事故でも、芸能人やスポーツ選手が当事者だと、マスコミは鬼の首を取ったようにいちいち報道してきた。最近では江角マキコさんが運転するクルマのドアミラーがタクシーに接触しただけで報道された。

  なぜそんな軽微な事故までマスコミがキャッチできるのかというと、理由は簡単。警察が発表するからだ。しかし僕は報道各社に言いたい。有名人の事故を報じることでドライバーの安全意識を高めようという、はなはだ効果に疑問のある警察の思惑にあなた方はまんまとのせられているだけですよと。

  もちろん、交通事故の報道そのものを否定するつもりはない。ただ、有名人が絡んでいるという理由だけで軽微な事故まで報じることに僕はなんら必要性を感じない。きちんとした取材をして、こんな場合はこうすれば事故は防げたという内容にするなら意義はあるけれど、そうでないなら興味本位のゴシップネタと質的に何ら変わりがないと思うのだ。

   それどころか、今回のようなケースが続けば、クルマ=悪者、交通事故=クルマが一方的な加害者という世間の誤った認識にますます拍車をかけ、それが行き過ぎた弱者保護にお墨付きを与え、ひいてはすべての善良なドライバーに不利益を及ぼす恐れすらある。とくに社会に大きな影響を与える大手報道各社には、重い公共性をになった者の矜恃をもって報道内容を精査することを望みたい。


PEUGEOT RCZ R プジョー RCZ R

パンチがあってしなやか プジョースポールの職人技

  昨年までプジョーRCZを愛車にしていた僕にとって、RCZ Rはとても気になる存在だ。なにしろ、プジョーのモータースポーツ部門であるプジョースポールの職人たちが手塩にかけてつくりあげた特別なRCZなのだ。1・6ℓターボは200psから270psまでパワーアップされ、サスペンションやブレーキも強化。ノーマルではサテンフィニッシュだったルーフアーチが黒に塗られ、電動格納式だったリアスポイラーも固定式になった。というようにちょっとスパイシーにはなったけれど、RCZならではの個性は健在。超高価なスーパーカーを除けば、いま手に入るスポーツカーのなかでもっとも妖艶で美しいデザインの持ち主だと思う。

  インテリアではサイドサポートが大きく張り出したシートに注目だ。コーナーでの体の安定性は最高。乗降性にはマイナスだが、R=レーシングを名乗るのならこのぐらいの演出があってもいい。それでいて、長距離走行にも適した適度なクッション性を備えているあたりはフランス車だなぁと思う。

  足回りにも同じことが言える。FF車としては異例ともいうべき270psのパワーにしっかり対応しつつ、乗り心地は驚くほどしなやか。僕が乗っていた200ps仕様よりむしろ快適だ。電子制御式の可変ダンパーを採用したわけでもなければ、サスペンションに大幅な改造を加えたわけでもない。ではいったいどんなマジックを使ったのか? 「プジョースポールによる最適化」というのがメーカーからの回答。つまり職人技である。

  高回転域のパンチ力と伸びきり感を高めつつ、このエンジンの持ち味である低中速域の扱いやすさとスムーズな回転フィールはいささかも失われていない。6速MTのみだが、市街地でも6速を多用できるほどの柔軟性を備えているため運転は楽ちんそのもの。にもかかわらず刺激性は確実に高まっている。うーん、またRCZが欲しくなった!

パリモーターショーでコンセプトカーとして発表されたハイパフォーマンスモデルクーペ。プジョーのモータースポーツ部門(プジョースポール)が徹底してチューンナップしており、1・6ℓターボエンジン、6速マニュアルトランスミッションを搭載、最高出力はプジョーの市販モデルにおいて史上最高を記録する。高性能ながら、環境に優しいパワートレインを取り入れ、“R”専用のデザインを採用している。限定150台。

PEUGEOT RCZ R

車両本体価格:¥5,400,000(税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,290×1,845×1,350
車両重量:1,340kg 定員:4人
エンジン:ターボチャージャー付直列4気筒DOHC
 
総排気量:1,598cc
最高出力:199kW(270ps)/6,000rpm
最大トルク:330Nm/1,900~5,500rpm
JC08モード燃費:13.7km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

BMW 2 SERIES BMW 2シリーズ

1シリーズの格上後継モデル 日本で走りを楽しめる絶妙サイズ

  このところものすごい勢いで車種を増やしているBMW。攻めの姿勢はまだまだ終わりそうもない。新たに登場した2シリーズクーペは1シリーズクーペの実質的な後継モデルだが、メーカーは「1→2へのネーミング変更に伴い少しだけ格上のモデルへと押し上げた」と説明している。事実、1シリーズクーペの価格が395万円~だったのに対し、2シリーズクーペは457万円~。プレミアムブランドなのだから仕方がない部分もあるけれど、若い人にとってさらに手が出しにくくなってしまったのはちょっと残念だ。

  とはいえ、外観をみれば価格アップが納得できてしまうのも事実。最近のBMWデザインは僕の好みとちょっとズレていることが多かったが、2シリーズクーペはそうとう気に入った。薄めのフロントグリルと抑揚の効いたボンネットはとてもバランスがいいし、彫りの深いサイドビューも素敵だ。流麗さでは4シリーズクーペに軍配があがるが、2シリーズクーペの最大の魅力は絶妙なサイズ感。全長4・5m弱というコンパクトさが、小気味よい走りを予感させる。

  エンジンは2ℓ直4ターボと3ℓ直6ターボの2種類。2ℓを積む220iでも絶対的な動力性能に何ら不満はないが、約150万円を追加投資してM235iを手に入れればクルマ生活の幸福度は大きく跳ね上がる。軽量コンパクトなボディと326psに達する大パワーの組み合わせはとてつもない加速をもたらすが、僕が本気で惚れたのはパワーそのものよりもパワー感のほう。BMWの十八番である直列6気筒エンジンはV6勢に押されいまや少数派だが、それはそれは素晴らしいフィーリングの持ち主だ。単にスムーズなだけでなく、息づかいとか鼓動感といった有機的な味わいがたしかに存在し、それがドライバーの感性を刺激する。ゴキゲンなサウンドを聴きながら加速していくときの気持ちよさはもう最高である。しかも嬉しいことにM235iには8速ATに加え6速MTの設定もある。珠玉のストレート6をMTで満喫できる貴重な一台というわけだ。

  フットワークにも抜かりはない。正確性と切れ味の鋭さを高次元で両立したハンドリングに加え、3シリーズが失ってしまった「手の中に収まる感覚」を味わえるのがいい。街中だけでなく、日本の箱庭的なワインディングロードで走りを楽しむのにはジャストサイズにしてベストの選択だと感じた。

コンパクトだった1シリーズから大幅にサイズを変更。特に前席ヘッドルームや後席レッグルームなどの室内空間を広くとり、ラゲッジルームの容量も拡大するなど快適性と使い勝手をアップさせた。BMWのクーペ特有のクラシックな3ボックスデザインや2ドアボディ、4シーター、スポーツ性能を徹底的に追及したエンジン・ラインアップとサスペンション・セットアップなどを取り入れることで、独自のキャラクターに仕上げている。

BMW 2 SERIES

車両本体価格:¥6,010,000(M235iクーペ MT、税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,470×1,775×1,410
車両重量:1,530kg 定員:4人
エンジン:直列6気筒DOHC 総排気量:2,979cc
最高出力:240kW(326ps)/5,800rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1,300~4,500rpm
JC08モード燃費:12.0km/ℓ 駆動方式:後輪駆動

CADILLAC CTS キャデラック CTS

ドイツ車やレクサスに劣らぬスポーツセダンの一級品

  アメ車ってデカくて重くて足がブワブワで燃費が悪くてすぐに故障するんだよね? クルマに詳しい人なら、それがカビの生えた古臭いイメージであることをすでにご存じのはずだ。が、いまやドイツ製プレミアムセダンよりスポーティーなのだと言われたら、本当に? と訝しむのではないだろうか。

  アメリカを代表するプレミアムブランドであるキャデラック。そのフラッグシップモデルであるCTSは、スタイリングやドライブフィールを通して、スポーツマインドを強く訴えかけてくる。3代目となる新型ではボディをメルセデス・ベンツEクラスやBMW5シリーズに匹敵するサイズまで拡大。一方で、およそ100㎏に及ぶ軽量化や2ℓ直4ターボへのダウンサイジングにより、燃費性能に磨きをかけてきた。

  しかし、そんなことより何より注目したいのがドライブフィールだ。設計上の工夫や構造用接着剤の使用により高い剛性を実現したボディは、走り始めた直後からまるで金庫の中にいるかのようなガッチリ感を伝えてくる。これだけボディがしっかりしていると足もスムーズに動くため、乗り心地もいい。加えて、50:50という前後重量配分がもたらすコーナーでのバランスのよさ、リニアな回頭性、濃密な接地感、リアルなステアリングフィールなどもCTSを一級品のスポーツセダンたらしめている理由だ。さすがに有り余るほどのパワーはないが、4気筒としては世界で指折りの静粛性と上質な回転フィールを誇るエンジンにも好感が持てた。

  新型CTSは走りで定評のあるドイツ車や、それを猛追するレクサスに勝るとも劣らない実力の持ち主だと断言できる。キャデラックの伝統を色濃く残しつつ、モダンな装いに変貌を遂げたインテリア&エクステリアも僕のお気に入りだ。右ハンドルの設定がないことと、ディーラー網の脆弱性には課題が残るが、クルマとしての魅力度は滅法高い。

全長は100㎜長くした一方、ルーフラインやフードラインなどは約25㎜低くすることで、躍動的なロングノーズのプロポーションを強調している。内装では職人の手によって仕上げられた装備と最新技術とを融合。本革シートを標準装備するなど、高級感溢れる本物の素材を精緻に仕上げた。日本には、主に装備の異なる「ラグジュアリー」と「エレガント」の2グレードが導入されている。

CADILLAC CTS

車両本体価格:¥5,990,000(CTS Luxury、税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,970×1,840×1,465
車両重量:1,680kg 定員:5人
エンジン:直列4気筒DOHC(インタークーラー/ターボチャージャー付)
総排気量:1,998cc 最高出力:203kW(276ps)/5,500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3,000~4,500rpm 駆動方式:後輪駆動

JEEP CHEROKEE ジープ チェロキー

ジープの伝統とフィアットの価値観 大変化を遂げた新生チェロキー

  チェロキーというと’90年代に日本で大ヒットした2代目が有名だ。逆に3代目と4代目はさして売れず、記憶に留めている人はいまや少数派だろう。

  そんななか登場した5代目チェロキーは、アッと驚くほどの大変化を遂げた。曲面を多用したボディに薄い目(ヘッドライトは下部のフォグランプに見える部分)を組み合わせたデザインは、どこからみても記憶に残っている四角いチェロキーとは別物だ。7スロットグリルと台形フェンダーが辛うじてジープであることを伝えてくるだけで、全体的なトーンはいま流行のクロスオーバーSUV(SUVと乗用車の中間的存在)である。チェロキーにしては丸いし、ジープにしては乗用車的、と言ってもいいだろう。

  チェロキーファンは嘆くのでは?と、アメリカ人デザイナーに突っ込んでみた。そのあたりは彼も十分承知のようで「ワイルドで四角いのがいいという人にはラングラーをお勧めする」とのことだった。

  外観もさることながら驚いたのはインテリアだ。ダッシュボードや各スイッチ類、シートなど、あらゆるところの質感が高い。従来のジープの常識をはるかに越えた仕上がりをみせているのである。 新型チェロキーは、クライスラーが親会社のフィアットと初めて本格的に共同開発したモデル。外観もそうだが、とくにインテリアの質感にはフィアット(イタリア人)の価値観がフルに反映されているという。そう言われればたしかに納得だ。

  共同開発の対象は内外装だけでなく中身にも及んでいる。プラットフォームはなんとジュリエッタと共用。FFモデルの軽やかなフットワークの秘密はそこにある。一方4WDのトレイルホークに優れた悪路走破性が備わっている点には、なんとしてもジープの伝統を守るんだという開発陣の意地を感じた。

  まだ始まったばかりだが、イタリアとアメリカの組み合わせは案外面白い。

従来のレトロな外観に比べ、お洒落でモダンな未来志向のデザインとなったチェロキー。ドライブトレーンにはジープ初のリアアスクル分離機能を採用、道路状況に応じ4×4から4×2に自動で切替えられ、燃費向上に役立つ。またトランスミッションには9速ATを採用しており、強力な発進加速と滑らかなパワー伝達を可能にした。安全機能は、ジープとしては最多である約70点を搭載、ドライバーの介入なしで車両を停止させる機能や車線逸脱防止のためのステアリング制御などを備えた。

JEEP CHEROKEE

車両本体価格:¥4,298,400(Traihawk、税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,630×1,905×1,740
車両重量:1,990kg 定員:5人
エンジン:V型6気筒DOHC  総排気量:3,238cc
最高出力:200kW(272ps)/6,500rpm
最大トルク:315Nm(32.1kgm)/4,300rpm
JC08モード燃費:8.8km/ℓ
駆動方式:4輪駆動(オンデマンド方式)

文・岡崎五朗


Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

定期購読はFujisanで