モータースポーツを諦めない

二輪、四輪を問わず、モータースポーツは、参加するには敷居が高いと思われている。

危険な印象もあるし、金銭的なことも不安だったり、そもそも始める方法が分からなかったり。「一度サーキットを走ってみたかった」「レースに出るのが夢だった」「レースチームに参加してみたい」と思いながら、もうイイ歳だし、いまさら無理だと諦めてしまっている人も多いだろう。今回紹介するモータースポーツは、イイ大人が気軽に参加できるものばかりだ。


ポルシェをレンタルしてサーキットを走行する

文・加藤彰彬

 東京から1時間弱の場所に「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」というポルシェを運転できる施設が出来たのでさっそく行ってきました。予約した内容は、シミュレーターでの30分の走行と、実車を2車種選択して乗り比べられる90分走行の「Mid vs. Rear」です。受付を済ませ、まずはシミュレーターによる走行を行います。日本各地のサーキットを選べるのですが、せっかくなので施設内の「ハンドリングトラック」を再現したコースを走ることにしました。シミュレーターで事前にレイアウトを覚えておくと、実際の走行の際に役立ちます。すぐにでも実車で走行したい気持ちは分かるのですが、安全のためにもシミュレーターは必須です。

 そしていよいよ、実車によるドライブ・エクスペリエンスのプログラムに入ります。まずは担当のインストラクターがつきます。今回僕の担当になったのはスーパーGTにも参戦経験のあるインストラクターでした。ポルシェの推奨するドライビングポジションの合わせ方を教えてもらい、各種ボタンの使い方を習ってからコースに入ります。制限速度が100キロとなっているので、物足りないと思うかもしれませんが、コースが広くないので直線部分以外では100キロで走ろうとしても限界を超えてしまうほどの緊張感です。コースの途中には世界の名物コーナーを模した場所があります。ラグナセカの「コークスクリュー」は現地ほど高低差はないものの、本物と同じでバンクを利用しないとうまく走れません。そしてもうひとつはニュルブルクリンクの名物コーナーの「カルーセル」。ドイツから図面を取り寄せて、舗装の材料まで同様にしたらしいのですが、ニュルブルクリンクが左回りなのに対して、ここは右回り です。僕はニュルブルクリンク24時間レースに右ハンドルと左ハンドルで出場した経験があるのですが、右ハンドルはバンクの下が見え難く、体が外に飛び出すような違和感がありました。なので日本仕様の右ハンドルのポルシェで走行するなら、右回りの方が実際の「カルーセル」に 近い感覚を味わえます。

 「ハンドリングトラック」以外にも様々なコースがあり、「ドリフトコース」では濡れた路面で、限界を超えたときにどんな動きになるのか、どうやって対処すべきかを学べます。興味深かったのは、ステアリングに装着されたダイヤルを回してドライビングモードを変えると、ステアリングの重さやスロットル、シフトアップポイント、ダンパーの固さなどが変更され、様々な表情を見せてくれることです。他にもコンクリートで舗装されたミニサーキットやジムカーナ場のようなパイロンの置かれたコースもあり、ローンチコントロールの体験もできます。アクセル全開のままブレーキを離すと最適な状態でクルマが発射され、シートに体がめり込むほどの加速を楽しめます。時間内であれば自由にコースを行き来することが可能なので、短い時間で濃い体験ができるのです。今回の場合、2車種を予約していたので、市街地の走行では得られないクルマの特性の違いを感じることもできました。全くスポーツ走行をしたことがない初心者でも、レース経験者でも、いまさら聞けないと思うこともインストラクターが丁寧に教えてくれて、しかもポルシェでサーキット走行ができるのです。これからモータースポーツを始めてみようという人にとっては、お勧めの場所です。

 最後に、「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」は、施設内の道路や建物が海外の雰囲気で作られているので、日本にいながら世界を旅している気分になれます。ポルシェが作っただけあって、独創的で高級感があり、ひとクラス上の非日常を感じることができます。それなりの大人が楽しむには、これからは重要なことだと思いました。

ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京

住所:千葉県木更津市伊豆島中ノ台1148-1
Tel:0120-718-911
受付時間:9:00-18:00(定休日:日・月曜)

2.1kmのロードコースでは、ポルシェの最新モデルの中から選んだ車両で、90分間のマンツーマン・ドライビングレッスンを受けられる。マカン、カイエンといったSUVからパナメーラ、911シリーズ、タイカンなど、バラエティ豊富な16車種から選べる。価格は44,000円~104,500円とモデルによって異なり、911で後輪駆動vs4輪駆動を乗り比べるプログラム、ミッドシップエンジンとリアエンジンの違いを探求するプログラム(どちらも77,000円)なども体験できる。Webでの事前予約が必要。また施設内にはポルシェブランドを体感できるラウンジやレストラン、本格的なレーシングシミュレーターも備える。


「モータースポーツを諦めない」の続きは本誌で

平手晃平と「車で遊ぼう!」 まるも亜希子

ポルシェをレンタルしてサーキットを走行する 加藤彰彬

誰もが参加できる耐久レース 横田和彦


定期購読はFujisanで