ゆるキャンでいこう!

少し前までは、キャンプといえばハードルの高い特殊な趣味のように感じていた。

しかし最近では、アウトドアブームの影響もあってキャンプが身近になって“ゆるいキャンプ”が流行っている。キャンプのアニメや車中泊、キャンプの聖地である北海道のことなど、クルマやバイクとキャンプの現状を探ってみたい。


キャンプブームを担う「ゆるキャン△」のリアル

文・山岡和正

 経済が低迷する昨今、アウトドア業界は失速するどころか業績を伸ばし続けている。人気のキャンプ場になると数か月先まで予約が入っているような状況で、ここ数年のキャンプブームには目を見張るものがある。ユーチューブなどから発信されている沢山のキャンプ動画の影響もあるが、アニメ「ゆるキャン△」の功績は大きいだろう。

TVアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』
TOKYO MX/BS11 毎週木曜23:30~をはじめAT-X・サンテレビ他で放送中

TVドラマ『ゆるキャン△2』
テレビ東京系 毎週木曜 深夜0:30~他で放送中

 「ゆるキャン△」とは文字通りゆるいキャンプの略で、△はテントや本作のキーワードになっている富士山を始めとした山をイメージしたものだ。山梨県身延町の女子高生5人を中心に、彼女たちが成長していく過程をキャンプを通じて描く平凡な日常のストーリーであり、作中にはキャンプの知識や、料理のレシピ、観光スポットなどの情報が正確に盛り込まれている。話のそこここにタイミング良くギャグやボケ、ツッコミなどがアニメならではの描写で面白おかしく描かれているところも魅力の一つだろう。原作は漫画で、TVアニメ化、TV実写版とそれぞれシーズン2まで作られていて、人気の高さが伺える。

 「ゆるキャン△」が大ヒットした理由のひとつは、登場人物以外の全てがリアルに描かれているということだ。住んでいる地域、自宅、バイト先、キャンプ場、観光スポットに至る全ての物が細かく描写され、使っているアウトドアグッズや、クルマやバイクまでもが実在するモノを連想させる。作品のファンはそこに行くことが出来るし、同じ製品を手に入れることもできる。背景に使用される美しい景色の場所へ同じタイミングに行けば、登場するキャラクターたちが感じたのと同じ気持ちを体験できるだろう。それは読者や視聴者を物語とリンクさせ、作品をより身近に感じさせることになり、結果大ヒットに繋がったのだと思う。

©あfろ・芳文社/野外活動サークル

 ストーリー的には誰もが容易に入り込めるような優しくほんわかとした空気感が漂い、キャンプシーンでは実際に自分もキャンプに参加しているかのような気分になれるのも魅力である。映画やドラマにありがちな善と悪との闘いや人間関係のトラブル、社会問題などに巻き込まれることもなく、思いやりのある優しい人たちが織りなす心温まる家族、そして友情の物語が描かれている。とはいえ、楽しく平和な話ばかりではない。普通の高校生であるがゆえに金銭面でひっ迫しているため安いキャンプ道具で我慢したり、キャンプ資金の調達やグッズを買うためにアルバイトに奔走する姿はリアルだ。他にもキャンプの危険性や回避の方法にも触れ、ストーリーの一部としてきちんと取り入れているのにも感心させられる。

©あfろ・芳文社/野外活動委員会

 最近のアニメ作品で特筆に値するのは制作サイドの飽くなき探求心というかこだわりである。「ゆるキャン△」の場合はメインキャラクターの「志摩リン」が原付で走るシーンでは、本物の50㏄のエンジン音がうなっているし、リンの祖父が乗る大型バイクもビッグツインらしい音を奏でる。クルマやバイクをはじめアウトドアや観光地などの正確な描写は、それらを知っている人が見てもつっこむ隙を与えることは無いだろう。

 この作品の魅力を知れば、アニメファンでなくともキャンプがしてみたくなるし、スクーターやバイクにも興味が湧く。それらは本作品に関わる企業やアウトドア業界に活気をもたらせ、更には地域の活性化にも繋がっていることは間違いない。アウトドア・アクティビティーのプロやインスタグラマーではなく、アニメ「ゆるキャン△」は現在のキャンプブームを推し進める原動力となっているのだ。

“聖地巡礼”のための「ゆるキャン△2浜松 浜名湖モデル地マップ」は、静岡県浜松市が発行。市の観光インフォメーションセンターや市役所、区役所、観光協会などで配布している。

5月21日~23日に富士スピードウェイで開催された「富士SUPER TEC 24時間レース」の会場で「ゆるキャン△」と富士スピードウェイがコラボしたブースを出展。ヤマハが「ゆるキャン△」をイメージして製作したトリシティ125とビーノを展示した。

写真提供:富士スピードウェイ


「ゆるキャンでいこう!」の続きは本誌で

キャンプブームを担う「ゆるキャン△」のリアル 山岡和正

ときにはクルマの中で眠る~大橋保之インタビュー まるも亜希子

キャンプの聖地、北海道の今 春木久史


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