アウトドアっぽいことしたい! 僕の南房総ライフ

あいかわらずクルマはSUV、バイクはアドベンチャーモデルなど、アウトドア感のあるモデルが好調だという。

いつの間にかオフロードっぽいものがクルマやバイクの主役になってきた。

西洋占星術によると「土の時代」から「風の時代」へと変換を遂げた今、クルマやバイクに対する価値観も大きく変わろうとしている。

僕の南房総ライフ

文/写真・河西啓介

東京―南房総での2拠点生活始まる

 このごろテレビ、雑誌、ウェブなどさまざまなメディアで「2拠点生活」という文字を見かける。2拠点生活とは、都市部に住居や職場のある人が地方にも住居を持ち、2つの拠点を行ったり来たりしながら暮らす生活スタイルのこと。違うパターンもあるだろうが、いま話題に上がる2拠点生活とは、概ねこのようなスタイルを指している。

 かく言う僕も数ヶ月前から、東京都心と千葉県・南房総市での2拠点生活を始めたばかりだ。流行りに乗った、というつもりではないのだが、もともと抱いていた2拠点生活への憧れが、コロナ禍によるライフスタイルやワークスタイルの変化などによって加速し、後押しされ実行に至った。……ということはやはり、世の中の流れに影響されたからということなのだろう。

 僕の2拠点生活の特徴は、東京と南房総、どちらも〝賃貸〟ということ。2拠点とか田舎暮らしというと、いわゆる別荘ライフ的なものを想像すると思う。すると「ハードル高い」「いまの自分じゃちょっとムリ」となりがちだ(僕もそうだった)。でも僕の場合、あらたに借りた南房総の家は家賃月5万円のアパートである。東京都心だったら駐車場代プラスαくらいというこの金額(都心の駐車場代、高すぎる……)だからこそ、踏み切れたということはある。

なぜ南房総だったのか?

 さて、ではなぜ僕が2拠点目として〝南房総〟を選んだのか。 まず僕は千葉県育ちで、海が好き、クルマやバイクで動くのが好き、というのがベースにある。ゆえに若い頃から千葉の海に行く機会が多く、それは歳を重ねてからも変わらず、毎年夏になるとしょっちゅう房総の海にドライブやツーリングに行っている。そうこうするうち数年前から「房総に拠点を持ちたいな」と思うようになっていたのだ。

 それを現実的に考えるようになった理由のひとつは、東京湾アクアラインの開通や館山自動車道の延長などにより、都心から房総方面へのアクセスが劇的によくなったこと。僕の東京の住まいから南房総の家まで、渋滞のない時間帯に動けばクルマで1時間20分ほどだ。道も快適で、移動の負担やストレスはとても少ない。加えて大きかったのはコストの安さだ。たとえば湘南などに比べると房総は圧倒的に〝田舎〟であるという恩恵なのだが、僕の借りた物件は高速のインターチェンジからクルマで5分、海までも5分というアクセス、築15年ほどの2DK(50㎡超)で家賃は前述の金額である。もちろんクルマの駐車スペースは付いている。

家からクルマで5分ほどの海岸。東京湾に沈む美しい夕陽が望める。

 というような理由から、僕は昨秋、ふと2拠点生活の実践を思い立ち、ウェブサイトで下調べしたうえで地元の不動産屋を訪れた。そして、その日紹介してもらった3件のうちの1件を即日に決めた。我ながらかなり衝動的な〝とりあえず2拠点生活〟のスタートだった。

2拠点がもたらした「2台持ち」生活

 今のところ、平日は東京、週末は南房総、というのが基本パターン。しかし週末に仕事や出張が入り、行けないときもある。そうなると「早く行きたい……」と南房総への思いが募ってくるから、かなりハマってきているのだろう。やはり海や山が近くにある生活はいい。静かで、空気は清々しく、天気のいい夕方には必ず夕陽を見るため海に向かう。夜になるとあたりは真っ暗になり、やることがなくなるので自然に早く寝るようになる。そうすると朝は早く目が覚め、東京に居るときとは生活サイクルが変わってくる。

細い山道、海岸沿い、ジムニーなら不安なく入っていける。

 そして2拠点生活による変化は、僕の〝カーライフ〟にも起きた。これまで愛車はちょっと旧いアルファロメオ・スパイダー1台だったが、南房総に行くようになり、やはりこの土地、環境にマッチしたクルマが欲しいと思うようになったのだ。こちらは基本、道幅が狭く、山に入れば舗装の荒れた 〝酷道〟があり、小さな海岸に行けば、砂の積もった道を走ることもある。そこでふと僕のアタマに浮かんだのはスズキ・ジムニーだった。小さくて頼りになる、軽のヨンク。見た目も大いに好みだ。

 そして運よく、縁あって、仕事を通じて長い付き合いのあるジムニーのカスタムパーツメーカー「アピオ」が自社のデモカーとして使っていたコンプリートカーを譲ってくれることになった。2拠点生活は僕に思いがけず〝2台持ち生活〟をもたらすことになったのだ。

リビングから家の前にとめた愛車が眺められるのが嬉しい。

海を見ながらコーヒーを淹れる。日常がささやかな楽しみになる。

房総名物?テレビでも紹介された「としまや」のチャーシュー弁当。

オープンカーとヨンクはひとつの理想の組み合わせ。

田舎のスーパーカー、ジムニー

 いざ乗り始めると、ジムニーは田舎暮らしにおいては最高のクルマだ。小さな車体、ちょうどいいエンジンパワー、圧倒的な走破性の高さ。そして2台持ちに嬉しい維持費の安さ。2拠点生活においてはどんな高級車もスポーツカーも敵わないスーパーカーである。

 クルマで東京と南房総を行き来するドライブは、さまざまな考えごとをしたり、自分の中のスイッチを切り替えるためのいい時間になっている。いまは主に都心生活ではスパイダー、南房総ではジムニーと使い分けているが、2台を乗り換えることで、スパイダーのよさもあらためて実感している。これから夏がやってきたら、幌を開けて房総の海岸を走るのは最高に気持いいはずだ。

 それと同様に、南房総に拠点を持つことで、快適さや利便性、さまざまなエンターテイメントや刺激に溢れた都心での生活のよさもあらためて感じている。ふと始めた2拠点生活だが、僕の生活に思った以上の〝豊かさ〟を与えてくれている。奇しくも僕がこの生活を始めた昨年末、西洋占星術では200年にいちどと言われる変わり目を迎え、「風の時代」になったと話題になった。風の時代とはこれまで続いた〝所有〟する時代から、〝持たない〟時代になることを意味し、それに伴い住む場所や働く場所にも縛られないようになると言われている。僕も2つの拠点と2台のクルマ(バイクも2台あるんだけど……)を活かして、風のように生きていきたい、と思うこのごろなのである。

2拠点生活は音楽活動を充実させるためでもある。心置きなく歌える環境があり、南房総からの音楽配信もしている。

河西啓介

「NAVI」の編集部を経て、「MOTO NAVI」「NAVI CARS」を立ち上げる。創刊から一貫して、クルマやバイクのある生活の「楽しさ」を発信し続けてきた。現在はエディター、ライター、コメンテーターなどフリーランスとして活動している。

「アウトドアっぽいことしたい!~「風の時代」を生きる」の続きは本誌で

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僕の南房総ライフ 河西啓介

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