解放 SNSが自動運転の未来を決める

明るい光や大きい空を感じられるオープンカーやバイクは、こころまでも開放的になる。

制限が多くなった昨今、コロナが収まったときに見える世界はもっと自由になっているのだろうか。

はたまた、その制限の中でも自由を見つけるのだろうか。

“解放”と自由を考えてみたい。

SNSが自動運転の未来を決める

文・小沢コージ

 つくづく面倒な時代になってきたものだ。今やSNSの時代であり、一億総批判社会だ。ソーシャルメディアで、ろくに個人情報も登録せずに、偉そうな批判が出来る時代。小沢個人もユーチューブの「KozziTV」やヤフーニュース公式コメンテーターとしてタマにコメントを出すが、舵取りの大変さったらない。

 よく勉強されている方、納得いく見解を書かれている人も多いが、情報不足、思い込み、単なる偏見を吐き出す人も多く、怒濤の感情の流れが走り出すと止まらなくなる。しかも結果作られた空気感を我々は無視することができない。毎日細かく更新されるウェブニュースとそれに反応したSNSが複雑に重なり見事に「大衆の意思」が形成されるのだ。

 かつて私の師匠と言えるとある編集長は「日本は世間体民主主義の国だから」と指摘したが、まさしく。昔から日本は一部エリートの理念ではなく、世間体によりいろんなものが動かされてきた。いい例が「芸能人の不倫」だ。みなさん知っているはずだが刑事的責任はなく、当事者同士の民事の問題だ。回りの人には基本関係はない。しかし「芸能人はイメージで食っている」からと言った理由で断罪し、彼らは仕事やCMを簡単に失ってしまう。

 コロナ問題もそうだ。毎日マスコミが出す一方的な感染者数とそれに反応した大衆の反射的な恐怖もあり、日本はあっさり窮地に追い込まれる。政府の対応が場当たり的で、疑問が多いのは本当だが、建設的な論議がなされているかは疑問だ。個人的見解だが、日本流の世間体民主主義はネットニュースやSNSの存在で加速し、さらに強力になったと思う。しかもそれは芸能、政治、経済はもちろん自動車問題をも直撃する。

 いい例がここ最近の「あおり運転」や「高齢者の運転」問題だ。あおり運転は一連のTV報道やそこから生まれた世論により、驚くほど早く改正道交法が施行された。大昔からあった問題だが、例の常磐道でのあおり運転報道がなされたのが一昨年の夏頃。その影響だけではないだろうが、昨年6月の改正道交法において見事にあおり運転が妨害運転として正式に認められた。高齢者の事故もそう。これまた一昨年の池袋の事故の影響がどれだけなのかは定かではないが、昨年3月に道交法改正が閣議決定され、早ければ来年には75歳以上のドライバーに運転技能検査が義務付けられる。

 さらに今後予想されるのが「電動化」と「自動化」への影響だ。本来的には、技術進化の結果として導入されるべきだと思うがこれまた「世間体」に左右されるに違いない。まず電気化だが、ここ数年顕著なのは大メディアを中心に発せられる「EVシフト」報道だ。最近でこそ自動車メディアや専門ジャーナリストによる正当な反論もなされているが、基本的には日本はEV化、電気化で遅れているという認識だ。かつて日本は半導体事業やデジタル家電で大敗北した苦い経験があり、再現の恐怖に駆られている。

 自動化、自動運転技術も同様だ。日本は技術的に素晴らしい面を持っていたが、担当官庁がかつて導入に及び腰だったこともあり、遅れている部分があった。今、逆転している部分もあるが、そこはなかなか世間に浸透しにくい。しかも今後、一度でも自動運転車が死亡事故を引き起こした場合、進化がイッキに止まってしまう可能性もある。そこは間違いなく世論であり、世間体に判断されるはずだ。どんなに他で成功し、安全が担保されていたとしても報道のされ方一発、SNSの波一発で「あんな危険なものを」、「自動運転なんて日本はやはり無理」という「世間体」という世論が作られてしまうのだ。そうなったら自動運転の進化はその時点で終わるに違いない。その危険性を、私はとても危惧しているのである。

VISION-Sは、昨年12月から公道テストをオーストリアで開始した。SONYが培ってきたセンシング技術や音響技術を、5Gを使ってアップデートして車両を進化させる。SONYは同時にAirpearkというドローンの開発も行っている。今回発表されたVISION-Sの空撮映像もこのAirpearkによって撮影された。α™シリーズのカメラを搭載でき、モーターや制御部品もすべて開発したという。得意分野であるイメージセンシングとAIロボティクスを融合させた、新たなドローンが日本の技術により生まれようとしている。

ahead Vol.202 ’20年2月号「なぜソニーがEVをつくり、トヨタが街をつくるのか」を読むことができます。

特集「解放」の続きは本誌で

イタフラの解放感 森口将之

飛行機は本当に自由なのか 後藤 武

オートサロンの匂い 大鶴義丹

僕がMIRAIを選んだ理由 岡崎五朗

バイクを書くということVol.2 伊丹孝裕

SNSが自動運転の未来を決める 小沢コージ


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