SV650熟成の歴史

文・横田和彦 写真・神谷朋公

何も飾らない、しかし想像以上のポテンシャルを秘めた〝普通じゃない〟バイク。それがSV650に対する個人的な見解だ。

 最初にこのVツインエンジンに出会ったのは1999年のこと。当時、僕が出入りしていたバイクショップでは、サンデーレースや走行会がブームで、色々なバイクでサーキット走行を楽しんでいた。そこで「こいつはスゴイ!」と皆から絶賛されていたのがデビューしたばかりのSV650だった。

 当時は鳴り物入りで登場したTL1000S/Rの注目度が高かったことと中間排気量車の立ち位置がハッキリしていなかったため、日本市場での評価はいまひとつ。というか注目してる人自体が少ないという印象。しかしサーキット遊びをしていた自分たちの間では、軽快なハンドリングやエンジン特性と車体が高レベルでバランスしていることなどからメチャメチャ高評価だった。

 実際、ヨーロッパ市場でも高い走行性能とコストパフォーマンスが受け、ライバル車を抑えて大ヒットモデルとなっていた。ミドルモデルの市場が未成熟だった日本では数年でカタログ落ちしてしまったが、ヨーロッパでは真逆の評価だったのだ。

 そのSV650が2003年にフルモデルチェンジを敢行。兄貴分のSV1000と同イメージとなる直線基調のデザインを採用した。性能面ではエンジンの出力を高めて、フレーム剛性も向上。総合的なポテンシャルを上げたことでより多くのユーザーを獲得することに成功する。これがロングセラーとなり、細かい改良が加えられつつ2014年まで生産された。だがこのモデルは日本では販売されず、逆輸入というカタチで少量が流通していただけというのは寂しい話だ。

 興味深いのは2009年にデビューした派生モデルのグラディウス650だ。走りのみならずデザインにもこだわって生み出された流麗なスタイルはヨーロッパの街角にも似合う洗練されたもの。そのためSVとは異なる顧客層にヒットした。ところがやや高額だったためか、グラディウスよりも普通のSVの方が売れたというエピソードがある。

 そして2016年、日本でも新型のSV650が登場する。Vツインエンジンはさらに熟成が進められ、パワーと扱いやすさが向上。高剛性としなやかさを両立させた鋼管のトラスフレームを採用し、デザインは原点回帰ともいえるシンプルなものに。流行りの電子デバイスは装備せず、ダイレクトなライディングフィールを重視したバイク造りによって〝ザ・スタンダード〟ともいえる高い完成度を誇っている。

 さらに強い個性を主張するライバルに対抗してカフェスタイルのSV650Xが2018年に追加された。しかし注目すべきはバイクとしての完成度だ。長い歴史のなかで着実に熟成を重ねてきたという事実。その経緯を知る我々にしてみればSV650を選ぶ人は「バイクの本質が分かっている人」なのである。

SUZUKI SV650 ABS

車両本体価格:752,400円(税込)
エンジン:P511・水冷4サイクル90°VツインDOHC4バルブ
排気量:645cc
最高出力:56kW(76.1PS)/8,500rpm
最大トルク:64Nm(6.5kgm)/8,100rpm

「もう一度SUZUKIに乗る SV650ABS」の記事を読むことができます。

SV650S(1999)

SV650S(2003)

GLADIUS(2009)

SV650(2016)

SV650X(2018)


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