岡崎五朗のクルマでいきたい vol.127 自動運転法規制

文・岡崎五朗

 昨年末、新聞紙上に驚きのニュースが掲載された。ホンダが2020年中にも世界で初めて自動運転レベル3を搭載したクルマを発売するというのだ。

 この件に関しホンダは否定も肯定もしていないが、折しも2020年5月にレベル3を認めた改正道路交通法が施行されることを考えると可能性はかなり高そうだ。詳しい人は「アウディA8が初なのでは?」と思うかもしれないが、A8はレベル3に対応するハードウェアを搭載しつつも、各国の法規制の関係で機能をレベル2に落として販売されている。つまり、順当にいけば日本は世界に先駆けレベル3を認める国になるということだ。「頭の固い官僚が日本の自動運転の開発を妨げている」としたり顔で言う人がいるが、上記のことからもわかるように、それは完全な間違い。日本は国策として自動運転を強力に推進している。

 「高速道路上」「渋滞での低速走行時」など、一定の条件を満たした場合、レベル3では運転中のよそ見が許される。本を読んでもいいし、スマホを操作してもテレビを観てもいい。そこが、いま普及が進んでいる自動運転レベル2(いわゆる高度運転支援システム)との違いだ。高速道路でのハンズオフを実現した日産のプロパイロット2.0も、よそ見をしてはいけないシステムだからレベル2ということになる。ただし、レベル3はシステムが自分の手に負えないと判断するとドライバーに運転交代を求めてくるため、よそ見はいいが飲酒や睡眠はNGとなる。

 ここで自動運転に関しておさらいをしておこう。アクセルやブレーキ操作の必要のないアダプティブクルーズコントロールは「フットオフ」、プロパイロット2.0は「フット&ハンズオフ」(ここまではレベル2=部分自動運転)。レベル3=高度自動運転はよそ見をしていいから「アイズオフ」、レベル4=完全自動運転は脳を使う必要がないから「マインドオフ」、レベル5=無人運転は「ドライバーオフ」となる。ここさえ押さえておけば自動運転はうんとわかりやすくなる。ということで今後どんどん進んでいきそうな自動運転だが、次号ではいやいやどうして一筋縄ではいきそうもないのですよ、という話を書きたいと思う。


SUZUKI HUSTLER
スズキ・ハスラー

ヒット可能性大の2代目ハスラー

 6年間で48万台という大ヒット作となった先代ハスラーは、軽自動車の世界にSUVの概念を取り込んだモデルとして画期的な存在だった。ライバルと言えばダイハツのキャストが思い浮かぶが、そのキャストをほぼダブルスコアで突き放した人気の秘密はデザインとパッケージングだ。ジムニーを連想させるスクエアなフォルムと、「ワゴンRが積めるものはたいてい積める」という優れたユーティリティーは、ハスラーにしかない大きな武器だった。SUVルックだけではダメ、広いだけでもダメ、両方揃っていたからこそハスラーは売れたのだ。

 しかし、ヒット作の後継モデル作りほど難しいものはない。守りに入ったら変わり映えしないと批判されるし、かといって変えすぎると「らしさ」がなくなったと批判される。その点、新型ハスラーは実にうまいところを突いてきた。ひと目でハスラーとわかる個性は維持しつつ、いい意味での道具感を増してきた。先代が含んでいた可愛らしさ成分を減らし、時計で言えばG─ショックのようなタフさを表現している。ジムニー、ジープ・ラングラー、Gクラスなど、タフさを前面に押し出したSUVが人気を呼んでいることを考えると、とても鋭い嗅覚だと感心する。

 走りの進化も大きい。走りだしてすぐに感じたのはボディ剛性の高さが生みだす質の高い乗り味だ。優れた基本設計に加え、スズキとしては初めて構造用接着剤を使ったことで、荒れた路面を走ってもブルブルしたりビリビリしたりせず、振動がスッと収まる。ステアリングの滑らかさや、タイヤの路面へのマイルドな当たり感も気持ちがいい。自然吸気でも元気に走るが、長距離走行が多い人はより余裕の大きいターボを選ぶといいだろう。

 多彩なオプションやアクセサリー、ワイヤレスで繋がるAppleCarPlay対応ディスプレイオーディオなど、周辺アイテムにも気合いが入っている。再ヒットする可能性大だ。

スズキ・ハスラー

車両本体価格:1,280,400円~(税込)
*諸元値はHYBRID Xターボ/2WD
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,680
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ
総排気量:658cc 乗車定員:4名
車両重量:830kg
エンジン: 最高出力:47kW(64ps)/6,000rpm 最大トルク:98Nm(10.0kgm)/3,000rpm
モーター: 最高出力:2.3kW(3.1ps)/1,000rpm 最大トルク:50Nm(5.1kgm)/100rpm
燃費:22.6km/ℓ(WLTCモード) 駆動方式:2WD

CITROËN C3 AIRCROSS SUV
シトロエン・C3エアクロスSUV

個性と遊び心。笑顔にさせるSUV

 DS3、C3とシトロエンを2台乗り継いできた僕にとって、C3エアクロスはかなり気になる1台だ。ベースとなったのは現行C3。「PF1」と呼ばれるプラットフォームやエンジンだけでなく、エクステリアやインテリアのあちこちにC3と共通のチャーミングなデザインテイストやパーツがみつかる。数あるコンパクトSUVのなか、個性や遊び心で選ぶならこれしかないなと思わせるところが、まずはこのクルマの魅力だ。

 C3ベースとはいえ、単に背を高くしただけではなく、ホイールベースを70mm、全長を165mm伸ばし、その分を後席と荷室の増大に充てている。ついでに言うと全高は135mm、全幅は15mm拡大。街中ベストを狙ったC3に対し、C3エアクロスはコンパクトでありながら週末のレジャーも想定したパッケージングの持ち主である。タワーパーキングの使用には制約が出てくるが、ファミリーユースに向いているのはC3エアクロスのほうだ。

 C3より約150㎏重いボディも、1.2ℓ直3ターボにとっては朝飯前。低中速トルク重視の味付けだから回せば回すほど刺激が高まっていくことはないけれど、その分、普段よく使う2,000rpm前後の力感が強い。トントントンと小気味よく変速していく6速ATや優れた静粛性との相乗効果で、気付くとけっこうな速度が出ている。それでいて上がからきしダメなわけでもなく、雑味成分をきっちり抑え込んだサウンドとスムースさは3気筒エンジンとしては出色の出来だ。

 同じグループ内のモデルでも最新のプラットフォームを使うDS3クロスバックと比べると静粛性と乗り心地は1ランク落ちるが、軽快なドライブフィールを好む人はC3エアクロスに軍配をあげるかもしれない。そもそも「夜のバリ」をイメージした妖艶なDS3クロスバックとC3エアクロスではキャラがまったく違う。乗る人を笑顔にさせる性能において、こいつの実力はとびきり高い。

シトロエン・C3エアクロスSUV

車両本体価格:2,638,000円~(税込)
*諸元値はFEEL
全長×全幅×全高(mm):4,160×1,765×1,630
エンジン:ターボチャージャー付直列3気筒DOHC
総排気量:1,199cc 乗車定員:5名
車両重量:1,270kg
最高出力:81kW(110ps)/5,500rpm
最大トルク:205Nm/1,750rpm
燃費:14.7km/ℓ(WLTCモード)
駆動方式:FF

MERCEDES-BENZ EQC
メルセデス・ベンツ・EQC

快適と安心が伝わるEV

 EQCはメルセデス・ベンツ初の量産EV。0─ 100km/h加速5.1秒、バッテリー容量80kWh、航続距離400km、価格1,080万円というスペックはプレミアムメーカー製EVとしては常識的なレベル。他のメルセデスとはテイストの違うフロントグリルによって多少の未来感はアピールしているけれど、たとえばジャガーi─paceのような「EVでなければ成立しない極端なショートノーズ」というわけでもない。それもそのはず、EQCはプラットフォームを同車のSUVであるGLC/GLCクーペと共用している。基本骨格が同じであれば、プロポーションが似てくるのは当然だ。

 そういう意味ではちょっと保守的な感もあるけれど、なかなかどうしてEQCはバランスよく仕上がっている。室内は十分広いし、荷室も500ℓを確保。床下に大量のバッテリーを積んだ影響でもっとも大きいのは最低地上高がGLCの180mmから130mmになったこと。前後2モーターの四輪駆動だが、デコボコ道を走る際は注意が必要だ。また、増した床の厚みをカバーするために標準装着したサイドステップは、子供やお年寄りにはいいかもしれないが、大人がステップに足をかけずに乗り降りするとかえって邪魔になる。とくに雨天時にはズボンの裾を汚しやすいことを頭に入れておいたほうがよさそうだ。

 走りはEVらしくウルトラスムースで静か。それでいてアクセルを踏めばどこからでもトルクが瞬時に発生して2.5トンという重量級ボディを力強く加速させていく。いいなと思ったのはステアリングについているパドルで回生ブレーキの強さを簡単に調節できる点。高速道路では回生を弱くして惰性を使うとスムースかつ効率的に運転できる一方、街中では回生を強めにすればブレーキペダルに踏み換える頻度がグンと減る。そして何より、快適性と安心感を常に伝えてくるドライブフィールがメルセデスらしいなと感じた。

メルセデス・ベンツ・EQC

車両本体価格:10,800,000円~(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,770×1,925×1,625
総電力量(バッテリー容量):80kWh
乗車定員:5名
車両重量:2,500kg
最高出力:300kW(408ps)/4,160rpm
最大トルク:765Nm(78.0kgm)/0~3,560rpm
駆動方式:四輪駆動

RENAULT MEGANE R.S. TROPHY
ルノー・メガーヌ R.S.トロフィー

FFで300psの高性能モデル

 ガーヌR.S.(ルノー・スポール)といえば、シビックタイプRとFF最速を競い合う生粋のホットハッチ。今回カタログに加わったR.S.トロフィーは、R.S.のパフォーマンスをさらに引き上げたモデルだ。

 1.8ℓ直4ターボの最高出力は21 psアップの300psに、最大トルクは30Nmアップの420Nm(MT仕様は400Nm)へとそれぞれ向上。いずれもターボの過給圧を高めることで実現しているが、ターボのボールベアリングをスチールからセラミック製に替えている。スチールより軽くて硬くて滑らかなセラミック製ボールベアリングはF1にも使われているテクノロジーだが、これにより摩擦は約3分の1まで激減したという。摩擦が減ればレスポンスが向上し、ターボラグも減るという理屈だ。

 実際、R.S.トロフィーのエンジンフィールは鮮烈だ。300psというピークパワーもさることながら、アクセルを踏み込むと間髪入れずにパワーが出てくれる。サーキットで好タイムを出すには、タイヤのグリップ限界を探りつつ、アクセルを微妙にコントロールしながら走ることが要求されるが、そういった走り方をしたとき、レスポンスのよさは大きな武器になる。

 もちろん、いくらパワーがあってもそれを路面に伝えられなければ宝の持ち腐れだ。その点でもR.S.トロフィーの実力は高い。締め上げたスプリング、ダンパー、スタビライザーはコーナーでの姿勢変化を最小限に抑え、さらにフロントに組み込んだトルセン式LSDが大パワーを無駄なく路面に伝え加速へと変えていく。電子制御によってパワーを絞るのではなく、あくまでメカニカルに強烈なトラクションを生みだしているのがすごい。

 ひと昔前まではFFで300psなど想像すらできなかったが、タイヤを含めた最新テクノロジーは不可能を可能としてしまった。

 外観はR.S.とほぼ同じだが、ホイールに入った赤いラインを見たら要注意である。

ルノー・メガーヌ R.S.トロフィー

車両本体価格:4,890,000円(MT)/4,990,000円(EDC)(税込)
*諸元値はトロフィー MT
全長×全幅×全高(mm):4,410×1,875×1,435
エンジン:ターボチャージャー付筒内直接噴射直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1,798cc 乗車定員:5名
車両重量:1,450kg
最高出力:221kW(300ps)/6,000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3,200rpm
駆動方式:FF

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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