第二世代のGT-R

文・橋本洋平/写真・長谷川徹

いまバブル期以降のジャパニーズスポーツカーが人気で高騰している。ちょっと前なら廃車寸前で見向きもされなかったクルマ達が、いまや年式から考えるとかなり高価で取り引きされているのだ。

 青春をもう一度? 昔は買う事ができなかったから? はたまた現代のクルマに魅力がない? 理由は様々だろうが、そこに群がるオヤジは後を絶たず。僕もそんなひとりで、ガレージには必ず1台はその頃の古いスポーツカーを鎮座させているから気持ちはよく解る。あの当時のスポーツカー達はゴキブリホイホイならぬオッサンホイホイ。輝かしい時代の蜜の味は、ついついもう一度とタイムスリップしたくなる。

R32型

 その人気のトップを快走しているのが、いわゆる第二世代のスカイラインGT-Rだ。全日本ツーリングカー選手権・通称グループAで勝利を手にするために開発が行われた第二世代GT-Rの初代・R32型は、そのレースで29戦29勝という偉業を達成。第一世代GT-Rが消滅して16年ぶりに復活したGT-Rということもあってか、いまだにファンはかなり多い。伝説というバックグラウンドと、いまでも色褪せない速さが惹かれる理由だろう。

 けれども高値で取り引きされている理由はその人気だけじゃない。海外からの熱視線もかなりのもので、それはゴジラという愛称を持つほど。直列6気筒のRB26DETTエンジンは、チューニングすればグループAの600馬力を遥かに上回る1,000馬力オーバーだって見込めるハイパワーであること。そしてトルクスプリット4WDであるアテーサET-Sがそのパワーを余すことなく路面に伝えられることもあるのだろう。日本の技術のすべてを集結したその姿は、海外ではフェラーリよりも好まれることがあるという。

 アメリカでは25年以上経過したクルマであれば、右ハンドルでもそのまま走って良いというレギュレーションがあるため、R32型はその条件を見事にクリア。おかげで海外に買われていくクルマが多いというのも、価格が高騰している理由のひとつらしい。僕もつい2年ほど前までR32を所有していたのだが、専門店に買い取って頂いた際に「過走行なので日本ではお客さんが付きにくい。おそらく海外に輸出すると思います」と聞いた。日本の名車を海外に流してしまうきっかけを作ったことは、ちょっとした罪悪感もあるが、日本の文化が広がるならばそれも良しと納得するしかない。

 続くR33はその発展版といっていいが、その人気ぶりには変化が出ている。実はR33型は数年前まで人気は薄かった。ホイールベースが105ミリも伸びて大きく重たくなったことが要因か、ともすればR32のほうが値段も人気も上回る傾向だったのだ。室内は広いし高速直進安定性も増すなど良いところはあるのだが……。だが、アメリカの25年ルールが近づいているせいか、最近ではみるみるうちに高騰をはじめている。実はR32を手放した直後、R33へとスイッチしようとしたのだが、相場が上がり始めて手を出すのを諦めたことがある。「まともな個体を期待するなら300万円オーバーは覚悟したほうがいい」とは、GT-R専門誌の経験もあるR33オーナーの言葉。以前なら程度の良いクルマでも100万円ちょっとで買えた。あの時代が懐かしい。

 第二世代を締めくくったR34は、いまだ大人気だ。実は第三世代のR35日産GT-Rよりも高値のクルマをよく見るほど。速さからすれば断然R35だろうが、スカイラインの冠を外し、直6からV6になったことに納得しない人々も多い。ただ、加熱しすぎた中古車市場を見ていると、R35もアリのような気もするのだが……。いずれにせよ、第二世代の完成形といっていいR34の内容は見どころが多い。Vスペックでは電子制御ディファレンシャルや、強烈なダウンフォースを生み出すアンダーパネルを追加。R33よりもホイールベースが55ミリ、全長で75ミリもスリムになり、旋回性能をアップさせつつ、高速直進安定性も高かった。路面に吸い付くその走りを味わった夜のことは、いまだ脳裏にはっきり焼き付いている。

 最新、最良、そして最速を目指したスカイラインGT-Rの世界は、このようにどのモデルもやはり魅力に溢れていることは言うまでもない。高値がつくのも仕方がないだろう。

 けれども、高価な理由はもうひとつある。それは状態維持を続けるにはそれ相応のメンテナンスが必要であり、そこにはかなりのコストがかかっているということだ。かつてエンジンブローで100万円を溶かした経験者が言うのだから間違いない……。

 第二世代GT-Rはいずれも高価すぎるかもしれないが、いま現在までGT-R文化を伝承してくれたと考えればむしろ安い。そう考えられる方々にぜひトライしていただきたい。

R33型

R34型

スカイラインGT-R

BNR32型(1989~1994年)
総排気量:2,568cc
車両重量:1,430kg
最高出力:206kW(280ps)/6,800rpm
最大トルク:353.0Nm(36.0kgm)/4,400rpm

BCNR33型(1995~1998年)
総排気量:2,568cc
車両重量:1,530kg
最高出力:206kW(280ps)/6,800rpm
最大トルク:367.7Nm(37.5kgm)/4,400rpm

BNR34型(1999~2002年)
総排気量:2,568cc
車両重量:1,540kg
最高出力:206kW(280ps)/6,800rpm
最大トルク:392.3Nm(40.0kgm)/4,400rpm


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