モタスポ見聞録 Vol.20 世界初の女性ワールドチャンピオン

文・サトウマキ

「スーパースポーツ世界選手権300」のワールドチャンピオンシップにて、初の女性チャンピオンが誕生した。

 彼女の名前は、アナ・カラスコ(21歳)。3歳からバイクに乗り始め、2011年からモトGPへの登竜門とも言える、CEVレプソルインターナショナル選手権125ccクラスに参戦し、初めてポイントを獲得した女性として注目を浴びた。そして2013年からはモトGPのMoto3クラスに参戦。久々の女性ライダーのレギュラー参戦となった。この年のチームメイトは、現在、MotoGPクラスのヤマハワークスで活躍しているマーベリック・ビニャーレス選手だ。

 この年、彼女は15戦目のマレーシアGPで15位に入り、初ポイントを獲得、更には最終戦のバレンシアGPで、現在Moto2でチャンピオン争いをしているミゲル・オリベイラやブラッド・ビンダー、暴れん坊のロマーノ・フェナティといった、今を輝くライダーたちに競り勝ち、自己最高位となる8位を獲得するという快挙を成し遂げている。そして2016年に欧州選手権のMoto2クラスに転向。2017年からは新設された「スーパースポーツ世界選手権300」に活躍の場を移し、2年目となった今シーズン、2018年の年間タイトルを手にしたのだ。

 このスーパースポーツ世界選手権300(SSP300)とは、スーパーバイク選手権(WSBK)と併催されており、名称通り市販車ベースのマシンで戦うレースとなっている。カラスコ選手が駆ったマシンはKAWASAKIのNinja400。今年参戦していたバイクは、他にHONDA CBR500R、YAMAHA YZF-R3、KTM RC390Rというラインアップとなっている。排気量がバラバラなのはなぜ? と疑問に思う方もいるだろうが、このクラスは欧州でA2クラスと呼ばれる車両で争われる。つまり、47馬力以下の車両であれば参戦できる。従って47馬力のNinja400はOKなのだ。SSP300のレースが行われるのはヨーロッパのみで全8戦。 参戦を開始した2017年には、ポルトガルラウンドで世界選手権のチャンピオンシップとしては女性初の優勝を飾り、ランキング8位で終了した。翌2018年はイタリアのイモララウンドとイギリスラウンドでぶっちぎりの速さで優勝。ポイントリーダーとして迎えた、最終戦のフランスラウンドで、25番グリッドという後ろからの追い上げとなったが13位でフィニッシュ。ランキングを争うライバルのマシントラブルによるリタイヤにも助けられ、2位と1ポイント差という僅差でチャンピオンとなったのだ。

 女性でも男性と一緒に戦える、そして、勝つことができるということを身を持って証明した。現在このクラスには、以前Moto3クラスで共に戦っていた女性ライダー、マリア・エレーラも参戦している。彼女もまたCEVレプソルインターナショナル選手権125ccクラスで、このクラスでは女性初となる優勝を飾っている。体力面ではどうしても男性には劣ってしまう勝負の世界で、性別を超え、果敢に戦っている女性たちを、これからも応援したい。

Maki Sato

ファッション誌や女性総合誌を経て、『BikeJIN』などのバイク専門誌の編集部に移籍。その後フリーランスに。愛車はKTM 690 DUKE(旧)で、都内の足として使っているのはスズキのアドレスV125。世界のバイクレースに精通するバイクマニアである。

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