Feature1 静かに熱い、日本EVフェスティバル

文・まるも亜希子 写真・三浦康史
先頭車両は、日本EV クラブが製作したEV スーパーセブン(2013 年に日本一周急速充電の旅をした車両)

23回目という長い歴史と、参加者、参加台数、出展メーカーの多さ、そしてユニークなプログラムの数々を誇る、年に1度の日本一のEV祭り。

 それが、本誌で連載している〝EVオヤジ〟こと舘内 端氏が率いる日本EVクラブ主催の「日本EVフェスティバル」である。今年も11月3日に筑波サーキット、コース1000で開催され、ぽかぽかの秋晴れに恵まれたなか、ちびっこ連れのファミリーから学生、仕事仲間や趣味仲間など大勢の参加者が集い、思い思いに楽しむ姿が見られた。私は昔、編集者として取材で訪れ、フリーランスになってからは市販車をEVに改造した「コンバートEV」の1時間耐久レースに出場したり、電気レーシングカート(ERK)のジムカーナ対決に挑戦したり、近年では最新のEVやPHV、FCVを参加者自身が運転できる試乗会のインストラクターを務めたり、様々な形で仲間に入れてもらっている。今年の印象は、昔からの常連さんに混じって、ずいぶんと新しい顔ぶれや若い世代が増えたなぁということだ。三菱アイミーブや日産リーフをはじめ、PHVの市販車も多くなった今、20年前はマニアックな世界だったEVが、急速に身近な存在になってきたのだと実感した。

 ただ、新しい顔ぶれが増えても、市販車が多くなっても、このEVフェスティバルいちばんの見どころは昔からほとんど変わらない。最も速いEVを作ったのは誰か? 最も速くEVを走らせるのは誰か? 作った人もドライバーもその仲間たちも年に一度、ここでワイワイやりながら真剣勝負。それを解説する舘内さんの漫談のような場内放送を聴きながら、観客も勝負の行方を見守り、コースのあちこちで起こるドラマにいつしか惹きこまれていく。バッテリーをはじめ、EVを作るために必要な部品や技術はどんどんアップデートされ、ノウハウも蓄積されていくから、23年同じことをやっていても、まったく飽きないどころか毎年何かしらの発見がある。そしてまだまだ、ほかのモータースポーツに比べたら敷居が低く、初心者がトライしやすいのも魅力だ。日本EVクラブでは、副代表の御堀直嗣さんによる「手作り電気自動車入門」なども紹介しているから、もともとは観客だったのにちょっと覗いてみたら面白さに目覚めてしまった、という人がたくさんいる。

 また、初めてこのイベントに来た人がまず驚くことも昔から変わらない。たくさんのクルマが走っているのに、なんでこんなに静かなの? なんで空気がきれいなの? EVのお祭りは、燃やすのは心の中の情熱だけ。ガソリンは燃やさない。だから、誰もが気持ちよく参加でき、長く続けてこられたのだろう。これからは時代の追い風も強まり、ますます〝静かで熱い〟盛り上がりを見せてくれるはずである。

1993年、舘内氏が製作した電気フォーミュラカー「電友1号」。10年近く眠っていた車両をEVクラブ有志が復活させ、デモ走行を行った。

ERK(電気レーシングカート)による30分耐久チャレンジ

コンバートEV1時間耐久チャレンジ(黄色のポルシェが優勝)

老若男女を問わずたくさんの人が集う年に一度のお祭り。www.jevc.gr.jp

EV・プラグインハイブリッドサーキット試乗会、ジャーナリストによるeドライブレッスン付きの試乗会。まるもさんが担当したリーフに試乗するのは、稲葉下妻市長。

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