フルカウルを纏ったミドルツイン ~カワサキNinja 650 ABS

文・サトウマキ 写真・長谷川徹

地平線の果てまでも、道さえあればどこでも行ける。ツーリングとはそんなロマンが詰まっている。しかしながら、ロングツーリングになればなるほど、快適性の高いバイクに憧れてしまう。

 疲れを感じながら走るのも、バイクの醍醐味ではあるものの、女性という体力を考えると、車体の重さや足つきなど、些細なことが疲れとなって蓄積されてくるからなのだ。だからこそ、ちょうど良いサイズの、ちょうど良い相棒が見つかればそれに超したことがないのだが…。とはいえ、女性は見た目にも厳しい。性能云々以前に、スタイリングに一目惚れできるかどうか、自分が乗ることによってどう見えるか、愛情を注げるか否かが、大きなベクトルになってくるのだ。

 と、前置きが長くなってしまったが……。ミドルツインスポーツというカテゴリーに属するカワサキのNinja650。この新型Ninja650にまたがったときに、このバイクならこれらをクリアにしてくれるかもしれない、と思ったのだ。

 フルカウルながらもアップライトなセパレートハンドルを採用したことにより、スポーツ走行にもツーリングにもマルチに活躍するNinja650。2017年モデルでフルモデルチェンジを果たし、6年ぶりに大幅なアップデートが施された。スタイリングもキリリとシャープな凄みのあるデザインとなり、よりスポーティに。そして、メインフレームも完全新設計となり、軽量なフレームとスイングアームで車重が193㎏、シート高が790㎜と、以前よりもコンパクトな印象だ。実際にまたがってみると、スポーティな見た目の割に足付きは悪くない。157㎝の身長で両足のつま先がちゃんと着地する状態だ。649㏄の並列2気筒というエンジンにも変更が加えられ「中低速域で力強い加速とダイレクトなスロットルレスポンスを発揮する特性に仕上げている」とのこと。

 確かにスロットルレスポンスがよく、低速でもトルクフルでエンストする心配は皆無。バックトルクリミッターの機能も含んだアシスト&スリッパークラッチの恩恵か、クラッチは軽くてスムーズ。低中速域での安心感は高い。さらに、低回転域からでもストレスなくパワフルに加速してその真価を発揮し、高速道路をずーっと走ってどこまでも行ってしまいたくなるような、そんな力強さが頼もしく感じられた。

 この、ミドルクラスのツインエンジンという特性がなんとも魅力的で、男性よりも体力のない女性に、またはちょっとリッタークラスには疲れてきたかな、といった男性にもお薦めのカテゴリーだ。例をあげると、長年愛されてきたW800(今年で生産終了)に始まりZ650、さらにヤマハのMT-07、ホンダのNC750、スズキのSV650、海外勢でいうとドゥカティのモンスター797やBMWのF800Rなど、個性的で味のあるバイクが名を連ねている。しかしながら、それらはすべてネイキッド・スポーツタイプであり、フルカウルを纏ったスポーツモデルはNinja650のみ。ツインならではのフレンドリーなスリムさと乗り味が、バイクを操ることに夢中にさせ、ミドルクラスであることに物足りなさを感じさせない。これが「ミドルスポーツ」というカテゴリーに属する、フルカウルをまとったNinja650の魅力でもあるのだ。このクラスのバイクの成熟は、女性ライダーのひとりとして喜ばしい限り。

 生粋のスポーツバイク〝Ninja〟の名を持つものとして、カワサキのフラッグシップモデルであるZX-10Rに近づけたとされるスタイリングがまた、気分を高揚させる。オールマイティな存在でありながらも、唯一無二の個性を持つ。Ninja650はそんなバイクなのだ。

Ninja 650 ABS
車両本体価格:807,840円(税込)
エンジン:水冷4ストローク
並列2気筒DOHC4バルブ
総排気量:649cc
最高出力:50kW(68ps)/8,000rpm
最大トルク:65Nm(6,6kgm)/6,500rpm

Ninja 650 ABS 360°ビュー
QRコードを読み込む(またはタップする)と、さまざまな角度から車両を観ることができます(スマホ一部未対応)。

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