FEATURE01 ヒエラルキーを超えるスバル ~SGP第2弾「XV」

文・世良耕太

 頑張らなくても運転がうまくなったように感じる。10メートルも転がせば、良さがわかる──。
「そんな難題を出されたって」と開発に携わった技術者は当初思ったそうだが、インプレッサはそれができたし、インプレッサに次いでSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用したXVも「到達できた」と、その技術者は説明する。

 10メートル転がせばわかる良さを実現できた理由はいくつかあるが、注目したいのは車種ラインアップの上下関係を取り払って開発したことだ。スバル車の頂点はレガシィである。これまでは、レガシィだったら投入するけれども、インプレッサやXVにはやりすぎだと、開発を遠慮する部分があったという。

 ざっくばらんに言えば、インプレッサやXVはレガシィより性能が良くなっては困るのだ。この性能とは、エンジンの出力といった数字で評価できる要素に限らず、安心感やいいモノ感といった感覚的な「良さ」も含んでいる。頂点にレガシィありきでクルマづくりに取り組んでいたスバルは、上下関係にとらわれず、車種ごとにいいクルマにしていくアプローチに切り換えた。新しいプラットフォームであるSGPをレガシィからではなくインプレッサから投入したのも、意識変革の現れだ。

 そのSGP、実は’16年に新型に移行したインプレッサのみならず、新しいXVに投入するのさえ、「ウソでしょ?」とくだんの技術者は思ったという。あまりに大仕事すぎてとても実現不可能だと感じたのだ。プラットフォームの一新などせず、受け継いできたものに手直しする手もあった。それなら、話は簡単だ。SGPは技術的にクリアすべきハードルが高く、開発の途中で「今からでも遅くない。元に戻した方がいいのでは」とさえ思ったという。

 だが、スバルの人たちは諦めなかった。良くなるとわかっていることを途中で放り出したくなかったのだ。高いハードルのひとつはこうだ。10メートル転がせばわかる走りの良さをもたらすサスペンションが、車体骨格側の協力もあって実現できた。しかしそれは試作車での話で、工場で生産して同じ品質を確保するには生産工程側の協力が欠かせない。XVの良さである追従性の高いしなやかな脚を実現するため、部品を組み付ける際の向きやボルトの締め付け精度にまでこだわった生産態勢を整えた。生産ラインにいろんな車種が流れるなかでXVだけ特別扱いするのは実に面倒なのだが、それをやってのけたのである。

 もっとやりたい、まだできるという思いを一部の従業員だけでなく全社で共有しているからこそ、いいクルマができる。XVはその象徴だ。

都会的で洗練されたルックスから、男性比率の高かったスバル車に女性ユーザーを引き付けるきっかけを作ったのが初代XV。新型は都会的なルックスは引き継ぎつつ、よりスポーティなクルマへとパワーアップした。悪路を走るとこのクルマの走破性の高さが実感される。

subaru XV
車両本体価格:2,678,400円(税込、2.0i-S EyeSight、AWD)
総排気量:1,995cc
最高出力:113kW(154ps)/6,000rpm
最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4,000rpm

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