岡崎五朗のクルマでいきたい vol.86 僕のモータースポーツ

 今号が皆さまのお手元に届く頃には、aheadチームが参戦するマツダ・ロードスター・メディア対抗4時間耐久レースの結果が出ているはず。5位入賞を果たした昨年に続き2年連続の好成績となるのか。こうご期待だ。

 モータースポーツは観るのも楽しいが、やはり自分で走るのが最高に楽しい。そうはいっても4輪レースはハードルが高い。よほどお金に余裕がある人か、よほどレースに入れ込んでいる人でもなければ、なかなか参戦する気分にはなれないだろう。その点、僕が趣味でやっているレーシングカートはとても手軽に楽しめるモータースポーツだ。

 なかでも、スバルやホンダの汎用4ストロークエンジンを搭載した「スポーツカート」と呼ばれるカテゴリーは、エンジンのメインテナンスにかかる費用が少なく、パワーもそこそこで初心者でも乗りやすい。新車を買うと数十万円するが、中古ならヤフーオークションなどでかなり安く手に入れることができる。実際、僕のチームのマシンは15年落ち。それでもメインテナンスさえきっちりやれば十分な戦闘力を発揮する。実際、先日ツインリンクもてぎで開催された7時間耐久レースでは、124台中12位というまずまずの成績を残すことができた。

 参戦費用も安い。7時間走ってもガソリン代は2,000円以下。マシンがシンプルだからたいていのメインテナンスは自分でできる。というわけで、ヘルメットやレーシングスーツ、遠征代を除き、かかるお金といえばタイヤ代とエントリーフィー程度。4~5人のドライバーで割れば一人2万円程度でたっぷり楽しめる。ツインリンクもてぎの7時間耐久レースは全国から大勢の人が集まってくるスポーツカートの祭典的位置づけだが、全国各地のレーシングカート専用サーキットでも小規模の耐久レースが開催されているから、普段はそれに参戦するのもいいだろう。

 モータースポーツにチャレンジしてみたいけれどなかなか踏み切れない…そんな人にはぜひスポーツカートをオススメしたい。汎用4ストロークエンジンとはいえ最高速は140km/hに達する。日常ではなかなか体験できない興奮を味わえること請け合いだ。


MAZDA AXELA
マツダ・アクセラ

本当のクルマ好きが選ぶアクセラの進化

 アクセラに待望の1.5ℓディーゼルエンジンが搭載され、それにあわせて内外装や足回りのブラッシュアップ、新技術の搭載などが実施された。いわゆるマイナーチェンジかと思いきや、マツダ曰く、マイナーチェンジではなく商品の大幅改良なのだという。

 マツダが言いたいのは、日本車にありがちな、マイナーチェンジという名の単なる化粧直しではないですよということ。毎年のように細かな小改良を実施し続けるという欧州車的な開発体制をとっている関係で、マツダにはマイナーチェンジという概念がない。そして今回は大幅なアップデートを施したため、小改良ではなく大幅改良なのである。ま、呼び方などユーザーにとってはどうでもいいことだが、クルマを常にアップデートし、育てていく姿勢は高く評価したい。

 1.5ℓディーゼルのいちばんの魅力は価格。定評のあるマツダのディーゼルが230万円から購入できるのは朗報だ。2.2ℓディーゼルのような厚みのあるトルク感こそないが、それでもディーゼル特有の粘り強さは十分に味わえる。今回ボディ側の静粛性対策を施したこともあって、静粛性も上々だ。ただしザラついた路面でのロードノイズは大きいまま。次回以降の改良を期待したい。

 もうひとつの目玉がGベクタリングコントロールという技術だ。ステアリングを切った瞬間に人間が体感できないレベルでエンジン出力を絞ることでフロントタイヤに2~5㎏程度の荷重を乗せる。これを連続的に行うことでタイヤの能力をより効率的に引き出し、コーナリングを安定させる。以前、テストコースでオン/オフ状態を乗り比べたが(市販車にオフスイッチは付いていない)、オンにするとクルマがピタリと安定するとともにライントレース性が向上。体の揺れも低減することを確認した。地味と言えば地味だが、マツダが目指す人馬一体の走りの進化に大きく貢献している。

新世代車両運動制御技術「スカイアクティブ ビークル ダイナミクス」の第一弾となる「G-ベクタリング コントロール」技術の初採用や、心地よいエンジンサウンドの追求、最小の視線移動で情報確認ができる「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」など、「人間中心の開発哲学」に基づき、あらゆる領域を深化させた。

マツダ・アクセラ

車両本体価格:2,303,640円
(アクセラスポーツ 15XD/2WD・6EC-AT、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,470×1,795×1,470
エンジン:水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
総排気量:1,498cc 乗車定員:5名 車両重量:1,360㎏
最高出力:77kW(105ps)/4,000rpm
最大トルク:270Nm(27.5kgm)/1,600~2,500rpm
JC08モード燃費:21.6km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

PEUGEOT 308 Allure BlueHDi
プジョー・308 Allure BlueHDi

個人的に購入した、ゴルフより良いフランス車

 欧州CセグメントはVWゴルフを中心に動いている。価格、性能、デザイン、ボディサイズ、装備内容、質感などなど、各メーカーはゴルフを徹底的に調査したうえで新型車を開発し、どの部分で並ぶか、超えるか、あるいは諦めるかという目標設定や、キャラクターの差別化を図る。欧州車はもちろん、最近ではスバルが新型インプレッサで「ゴルフ超えを目指した」と公言している。

 当然ながら、ゴルフが登場してしばらく経つと、部分的にゴルフに勝つクルマが出てくる。しかしそれはたいてい数年後のことであり、全体がゴルフレベルに追いつく頃になると、再びゴルフがフルモデルチェンジして目標をより高みに引き上げてしまう。

 そんな中、現行ゴルフのデビュー翌年にリリースされたプジョー308は、僕が思うにかなりの部分でゴルフ超えを実現したモデルだ。最新プラットフォームは軽く高剛性で、ハンドリングと乗り心地と静粛性のバランスはクラストップの仕上がり。使い勝手に難のある操作系と、完成度の低いACC(*)を除けば「ゴルフよりいいクルマ」だと思う。

 フランス車がそんなに優秀だなんてちょっと信じられないよ、と思う人もいるだろうが、これは事実。でなければ愛車として買ったりはしない。

 僕が購入したのはハッチバックのみに用意されたGTiという左ハンドルMTの高性能グレードだが、それと同じぐらい魅力的なグレードが加わった。1.6ℓディーゼルを搭載するブルーHDiだ。高回転までは回らないため最高出力は120ps止まりだが、300Nmという最大トルクはGTiに迫るレベル。実際、常用域での力強さは想像以上。静粛性も想像以上。そして燃費も想像以上である。2タイプあるが、ステーションワゴンは323万8千円。ハッチバックなら300万円を切る。この価格でこの内容は大いに魅力的だ。ぜひ一度試乗して実力を実感して欲しい。

昨年、累計生産100万台を突破したPSAグループ開発による最新のクリーンディーゼルエンジン「BlueHDi」。その搭載モデルが国内初導入された。BlueHDi搭載により、同性能のガソリン車に比べ、CO2排出量を15%低減、燃費は25%改善されるという。高効率でパワフルな動力性能も魅力。「308」に加え「508」にも搭載モデルが設定された。
*ACC:アダプティブ・クルーズ・コントロール

プジョー・308 Allure BlueHDi

車両本体価格:3,238,000円(308 SW Allure BlueHDi、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,585×1,805×1,475 車両重量:1,400㎏ 定員:5名
エンジン:直列4気筒SOHCターボチャージャー付ディーゼル
総排気量:1,560cc 最高出力:88kW(120ps)/3,500rpm
最大トルク:300Nm/1,750rpm JC08モード燃費:21.0km/ℓ 駆動方式:前輪駆動
※写真は海外仕様車です。

MERCEDES BENZ E-CLASS
メルセデス・ベンツ Eクラス

ラグジュアリーとは何かを突き詰めた10代目

 1947年の初代から数えて10代目のEクラスが登場した。Eクラスはメルセデスの中核モデルであり、常に最新技術を取り入れてきた。今回も例外ではなく、アルミの使用率を増やして軽量化したボディや多彩なエンジン群、9速AT、世界で最も進化した先進安全装備、フル液晶メーター、次世代マルチビームLEDヘッドライトなど、数え切れないほどの新技術を採用している。そこから伝わってくるのは「クルマは決してコモディティ商品ではない。まだまだ進化していくのだ」というメルセデスの強い主張だ。

 一方で、人が感じる心地よさに気を配ることも忘れていない。デザインキーワードとなったのは「モダン・ラグジュアリー」 それを具現化していく過程で、彼らはラグジュアリーとは何か? を徹底的に議論。結果「高級とか高価ではなく、シンプルさやゆったりした時間の流れこそが本物のラグジュアリーである」という結論にたどり着いたという。具体的には、デザインから匂いや照明などまで徹底的に吟味し、最高の寛ぎ感を追求した。クラフトマンシップが細部にまで行き届いた上質さと、最新デバイスによるモダニズムが渾然一体となった室内空間は惚れ惚れするほど艶っぽかった。もちろんメルセデスらしい優れた機能性は健在だ。

 試乗したのは2ℓ直4ガソリンターボを積むE200アヴァンギャルドスポーツ。Eクラス用としては最小のエンジンだけに動力性能は必要にして十分どまり。ゆとりやスポーツ性を望むならもう1~2クラス上のエンジンを選びたいところだ。まだ試乗できていないが、E220dが積む最新設計の2ℓディーゼルターボは興味深い存在である。

 フットワークは基本的には好感の持てる仕上がりだったが、大きな段差を通過した際の角の尖ったショックや、それに伴い発生するボディの振動減衰の甘さは少々気になった。このあたりが改善されれば、よりメルセデスらしい深みのある乗り味になるだろう。

「アヴァンギャルド」「アヴァンギャルド スポーツ」「エクスクルーシブ」の3グレード計7モデルを用意。新開発のディーゼル搭載モデルは、軽量設計と空力性能を組み合わせ、セグメント最高レベルの燃費効率を実現した。また、混雑時や高速道路での渋滞時に、自動運転によってドライバーの負担を軽減する新技術「ドライブパイロット」が搭載されている。

メルセデス・ベンツ Eクラス

車両本体価格:6,980,000円(E220 d AVANTGARDE、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,930×1,850×1,455
エンジン:DOHC 直列4気筒 ディーゼルターボチャージャー付
総排気量:1,949cc 乗車定員:5名 車両重量:1,800㎏
最高出力:143kW(194ps)/3,800rpm 
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1,600~2,800rpm
JC08モード燃費:21.0km/ℓ 駆動方式:後輪駆動

TESLA MODEL S P90D
テスラ・モデルS P90D

モデルSに“運転支援技術”を搭載

 この連載でテスラ・モデルSを紹介するのは3回目。1回目はデビュー直後の2013年。次はデュアルモーター(4WD)が登場した2015年。今回紹介するのは、テスラが「オートパイロット」と呼ぶ自動運転技術だ。オートパイロットは、対象となるハードウェアを備えた車輌のソフトウェアをアップデートすることで有効となる。具体的には、2014年10月生産以降の、前方レーダー&ビューカメラ、12個の長距離超音波センサー、高精度デジタル制御式電動ブレーキアシストシステムを組み込んだ車輌が対象となる。自動運転というデリケートなシステムをアップデートで実現してしまうところはいかにもシリコンバレーの企業らしい。

 とはいえ、目的地をセットすれば自動的に連れて行ってくれるわけではない。オートパイロットがやってくれるのは、①路面の白線を認識してレーン内にとどまるようステアリング操作を行う「オートステアリング」、②ウインカーを出すと周囲の状況を監視し可能なら自動的にレーン変更する「レーンチェンジ」、③「自動駐車」の3点。前車追従型クルーズコントロール(ACC)も付いているから、高速道路ではドライバーはシステムを監視するだけでほぼ事足りる。なお、オートパイロット走行中にアクセルペダルから足を離すのはOKだが、ステアリングから手を離すと約10数秒後に警告が出て、それでも手を添えなければハザード点灯状態で速度を落とし停車する仕組みになっている。

 実際に試してみたが制御は上手だった。とはいえ真横にクルマがいるのに車線変更を試みようとするなど、その信頼性は100%には達していない。そもそもオートパイロットは国土交通省が定義する「自動運転レベル2」に属する技術なので、事故が起こったときの責任はドライバーにある。実質的にも法的にも、自動運転ではなく、運転支援装置と呼ぶのが妥当だろう。

オートパイロット走行時には、自車のポジションをフロントディスプレイで確認できる。例えばレーンチェンジ時には、取り巻く車両の種類も含め周辺状況が表示されるため、視覚的な安心感もある。なお、8月24日には新しいバッテリーサイズ100kWh搭載の「モデルS P100D」が発売。市販の電気自動車として初めて600㎞を超える圧倒的な航続距離を実現している。

テスラ・モデルS P90D

車両本体価格:13,648,000円(P90D、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,970×1,950×1,450
車両重量:2,239㎏ 定員:5名/最大7名(オプション)
モーター出力:263ps(フロント)/510ps(リア)
モータートルク:830Nm 航続距離:509km
最高時速:250km/h 駆動方式:全輪駆動

文・岡崎五朗


Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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