岡崎五朗のクルマでいきたい vol.82 三菱の企業文化

 この原稿を書いているまさにそのタイミングで三菱自動車の燃費試験不正問題のニュースが飛び込んできた。

 速報性ではどだいネットにかなわない印刷媒体は、本来であればきちんとした取材と考察を売り物にすべきだ。この原稿が皆さまの手に届く頃には、現時点では明らかにされていない新事実が出ているかもしれないし、予想も付かない展開になっているかもしれない。しかし、それを承知のうえで書くことにした。いま自分の考えを述べておかなければ、さらに1ヵ月経ってしまうからだ。それぐらい、今回の不正は深刻な問題である。

 事の発端は2013年6月から発売している「eKワゴン」「eKスペース」と、日産向けに供給している「デイズ」「デイズルークス」の4車種で燃費試験データの改ざんが発覚したこと。国に提出する走行抵抗値(タイヤの転がり抵抗と空気抵抗)を実際より低く報告するという不正行為によってカタログ燃費を5~10%水増しした。日産の試験によって発覚するまで、この不正は三菱の社長に報告されていなかったという。また、4月20日に行われた社長会見では「性能実験部部長が自分が指示をしたと証言している」という主旨の発表があった。

 eKワゴンが発売された当時、軽自動車の燃費競争は激化し、各メーカーはコンマ1km/ℓ単位でしのぎを削っていた。わずかな燃費の差が販売に大きく影響したからだ。そんなプレッシャーが不正の背景にあったのはまず間違いない。しかし、不正をしたところでその部長になんの得があるのだろう? その部長の指示に従った人たちを含め「上からの要求にノーと言えない企業文化」があったとしか思えない。2000~2004年のリコール隠しでは組織ぐるみの犯罪と認定され当時の副社長が書類送検され罰金刑となった。現経営陣が今回の不正にどれだけ関与しているのかはまだわかっていないが、個人の暴走とはおよそ考えられず、コンプライアンスよりも上からの指示が上回ってしまう企業文化が露呈された。いま三菱に求められているのはユーザーへの謝罪、賠償、徹底した原因究明、積極的な情報公開、そして何より企業文化の改革である。

 三菱車ユーザーのためにも、また大部分の真面目でクルマ好きな三菱自動車社員のためにも、非難するだけではなく、三菱頑張れ! というスタンスで僕は応援したい。


PEUGEOT 308GTi by PEUGEOT SPORT
プジョー308GTi by プジョースポール

プジョー量産車史上、最強のホットハッチ

 プジョー308が属するのは欧州Cセグメント。このクラスのベンチマークは常にゴルフだ。どういうことかというと、各メーカーとも「ゴルフに追いつけ、追い越せ」を新型車開発の目標にするということ。まだ登場していない次期型インプレッサの開発者も「ベンチマークはゴルフ」と公言している。

 そんななか、もっとも多くの部分でゴルフを超えているのは、メルセデス・ベンツAクラスでもBMW2シリーズでもなく、プジョー308だと断言できる。とくに、乗り心地、静粛性、スタビリティといった分野ではクラストップの実力の持ち主。日本ではいまひとつ存在感を発揮しきれていないが、2014年には欧州カーオブザイヤーを獲得するなど、その実力は折り紙付きである。

 そんな308に新たに加わったのがGTiだ。正式名称は「308GTi バイ プジョースポール」。プジョースポールとはプジョーのレース部門で、レースやラリーで活躍する百戦錬磨の連中が手がけた高性能版308、と解釈すればいい。

 最高出力270psの「270」のみで展開の2トーンカラーを選択するとかなり好戦的なイメージになるものの、モノトーン車の装いは控えめ。プジョーの市販車として史上もっともホットなモデルであることを示すのは19インチタイヤとわずかなディテールの違いに留まる。「羊の皮を被った狼」といったところである。

 走りはじめてもそんな印象は変わらない。左ハンドルMTのみという設定こそマニアックだが、低中速トルクはたっぷりあるし、クラッチの踏力もごく常識的。なにより19インチタイヤを履いているとは思えないほど乗り心地が洗練されている。それでいて、走らせれば痛快! のひと言。最高出力を250psに抑え、約50万円ほど安く提供される「250」もなかなかの出来映え。1台のクルマに実用性と走りの楽しさの両方を求める人にとっては見逃せない存在だ。

1980年代を象徴する名車として語り継がれる「250GTi」のDNAを受け継ぎ誕生。エンジンは、1.2リッター3気筒ターボの「308」に対し、「308GTi by PEUGEOT SPORT」は1.6リッター直4ターボを搭載、グレードは最高出力の異なる2種類を設定。“クープ・フランシュ”と呼ばれるレッド&ブラックの配色が印象的なボディは、270のみで+30万円(受注生産)で選択できる。

プジョー308GTi by プジョースポール

車両本体価格:4,360,000円(308 GTi 270 by PEUGEOT SPORT/6MT、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,260×1,805×1,455
車両重量:1,320㎏ 定員:5人
エンジン:ターボチャージャー付直列4気筒DOHC 総排気量:1,598cc
最高出力:200kW(270ps)/6,000rpm 最大トルク:330Nm/1,900rpm
JC08モード燃費:15.9km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

DS DS4 CROSSBACK
DS4 クロスバック

デザインが魅力、DS4ベースのSUV

 シトロエンから独立し、DSオートモビルとして独り立ちしたDS。今後PSAは「プジョー」「シトロエン」「DS」という3つのブランドで戦っていくことになる。

 そのDSの最新モデルがDS4クロスバックだ。DS4をベースにいま流行りのSUVテイストを加えたクルマだが、駆動方式はFFのみ。最低地上高を20mm嵩上げしていることを除けば機能面でのSUVらしさは薄い。意地悪な言い方をすれば、なんちゃってSUVである。

 けれど、僕はこのコンセプトは大いにアリだと思っている。なぜって、いまや悪路走破性を求めてSUVを選ぶ人は少数派で、多くの人はSUVの「スタイル」を求めているから。そういう人たちにとって4WDにかかるコストと重量は必ずしも歓迎すべきものじゃない。FFでいいと割り切れば軽くて安くて燃費もよくなるわけで、FFのSUVを「なんちゃってSUV」と蔑むような雰囲気は非建設的。むしろスマートな選択として推奨したいぐらいである。

 そんな前提でクロスバックを評価すると素晴らしく魅力的なクルマに思えてくる。「夜のパリをイメージしたフレンチプレミアム」という魅惑的なブランドコンセプトを掲げているだけに、ベースとなったDS4そのものがとにかくカッコいい。実用的な4ドアハッチバックでありながらクーペのようなスタイルを追求した結果生まれたスピード感と躍動感は、ゴルフをはじめとする他の4ドアハッチバック車には望めない魅力。ルーフモールディング、ルーフスポイラー、専用フロントバンパー、ブラックホイール、ホイールアーチモールディンといったSUV風のスパイスの効かせ方も巧みで、DSのなかでは異例に日中のアウトドアシーンが似合うクルマに仕上がっている。デザイン感度が高い人や、一台で実用性と趣味性の両方を極めたいという欲張りな人におすすめしたい。

最も美しいクルマに贈られる賞を受賞したほど、流麗なフォルムで知られるDS4。クロスバックは、DS4よりアイポイントを30mm高くしながら、多くの国内立体駐車場にも対応可能なサイズとなっている。左写真のシート形状は、時計のストラップをモチーフにデザインされたもので、ディティールにまでこだわりが見られる。

DS4 クロスバック

車両本体価格:3,380,000円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,285×1,810×1,530 車両重量:1,370㎏
定員:5人 エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1,598cc 最高出力:121kW(165ps)/6,000rpm
最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1,400-3,500rpm
JC08モード燃費:14.9km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

MERCEDES-BENZ GLC
メルセデス・ベンツ GLC

Cクラスの先進性を持つ右ハンドルのSUV

 このところのSUV人気はとどまることを知らない。’98年に初代レクサスRX(日本ではハリアーとして販売)が先鞭を付けたプレミアムクロスオーバーSUVというジャンルは、いまや多くのプレミアムブランドにとってドル箱的存在だ。売れるから気合いを入れて開発する→魅力的な商品が生まれる→さらに売れる、という好循環の典型例である。

 そんななか登場したメルセデス・ベンツGLCは、CクラスをベースにしたSUVだ。先代はGLKと呼ばれていたが、SUVのネーミングに関する新ポリシー(GLに続くアルファベットでクラスを表す)を受けてGLCと命名された。

 お世辞にもカッコいいとは言えなかったGLKに対し、GLCはイマどきのSUVらしく柔らかな曲面で構成されている。華やかなインテリアを含め、Cクラスの持ち味を最大限活かしながらつくりあげたSUVという印象だ。機能面では、4WDシステムとの兼ね合いで左ハンドルしかなかったGLKに対し、右ハンドルと4WDを両立しているのも多くの人にとって朗報だろう。

 走りの仕上げは抜群だ。飛ばしてどうのという以前に、走り始めた直後、それこそタイヤがひと転がりした時点からサスペンションがアメーバのように動いている様子が伝わってくる。不思議なのは、低速でこれほどしなやかなのに速度を上げていくと今度はピタリとフラットな姿勢になること。こうした魔法のような挙動こそメルセデス特有のタッチであり、僕がメルセデスに求める味でもある。これができている時点でほぼ満足してしまったのだが、GLCはワインディング走行でも腰高感を微塵も感じさせない安定した走りを見せてくれた。

 価格は628万円~。Cクラスにはセダン、ステーションワゴンとも400万円台のグレードがある。できることならGLCにも手の届きやすいグレード展開を望みたいところだ。

ベストセラーモデル「Cクラス」と同等の安全性かつ快適性を実現。歩行者検知機能付き自動ブレーキや「レーダーセーフティパッケージ」、「LEDインテリジェントライトシステム」(走行状況や天候に応じ、5つの照射モードを自動で選択)など、充実の安全システムを全車標準装備とした。

メルセデス・ベンツ GLC

車両本体価格:6,780,000円(250 4MATIC Sports、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,670×1,890×1,645
車両重量:1,830㎏ 定員:5人
エンジン:DOHC直列4気筒ターボチャージャー付
総排気量:1,991cc
最高出力:155kW(211ps)/5,500rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1,200~4,000rpm
JC08モード燃費:13.4km/ℓ 駆動方式:4WD

JAGUAR XF
ジャガー XF

新たなるイギリス車の真髄

 ジャガーXFは、もっとも美しいサルーンである。この結論に至るまでは少々時間がかかった。1度目は海外のモーターショー。2度目は伊勢志摩での試乗会。そして3度目の対面となる今回の試乗で僕はついに恋に落ちたわけだ。

 正直、最初の出逢いでは「没個性」「ジャガーらしさを感じない」「先代の方がよかった」という印象が先行した。しかし、判断を急ぐと間違ってしまうのがイギリス車の常。名車の誉れ高き英国車はすべからく「先代の方がよかった」と言われながら見事に評価を覆していった。ならば新型XFに同じことが当てはまるのではないか?

 その徹底的なモダニズム、シンプルさには、「ツイードのジャケットを着た英国紳士の似合うクルマ」というかつての面影はない。しかしそれをジャガーに求めるのは、レクサスにフジヤマ芸者テイストを求めるようなものだろう。

 新しいジャガースタイル、新しい英国スタイルをどう作りこんでいくか。その答えがXFであるとするなら、彼らの狙いは完璧に達成されている。見れば見るほど惹かれていくデザインには「タイムレス」というイギリス車の神髄が、エレガンスとスポーティーを高度に両立させた独特の佇まいにはジャガーらしさの神髄が宿っているからだ。

 パワートレーンはガソリン2種、ディーゼル1種の合計3種類。どれもいい出来だが、なかでもディーゼルのアイドリング騒音の小ささと回していったときの快音には心底驚かされた。スポーティーでありながらヒタヒタと歩くように走る〝猫足〟も絶品だった。

 課題はアナログ風を中途半端に追った液晶メーターのグラフィックデザイン。しかしこれはマイナーチェンジでどうにでもなる部分なので今後の改良に期待したい。いずれにしても、新型XFは将来モデルチェンジしたとき「先代の方がカッコよかった」と言われることになるだろう。イギリス車は深い。

ボディの75%にアルミニウムを使用することで、クラス最軽量になったというXF。ねじり剛性を向上させたほか、前後重量配分を50:50という理想的なバランスに仕上げ、俊敏かつ精密で安定したハンドリングを可能にした。先代より広々とした室内空間も確保している。トランスミッションは8速ATとの組み合わせ。

ジャガー XF

車両本体価格:6,930,000円(20d PRESTIGE/8AT、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,965×1,880×1,455
車両重量:1,760kg
エンジン:2ℓ直列4気筒ディーゼルターボ
総排気量:1,999cc
最高出力:132kW(180ps)/4,000rpm
最大トルク:430Nm/1,750~2,500rpm
JC08モード燃費:16.7km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

文・岡崎五朗


Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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