岡崎五朗のクルマでいきたい vol.81 眠る警察官

 クイズをひとつ。イギリスで「Sleeping policemen=眠る警察官」と呼ばれているものとはなんでしょう?

 ヒント1:目的はクルマのスピードを低下させること。

 ヒント2:欧米の住宅街でよく見かける。

 正解は“ハンプ”。道路に設置したかまぼこ状の段だ。スピードを落とさずにハンプを乗り越えると、クルマは激しく揺れ、最悪の場合下回りを打つことも。だからドライバーは半ば強制的に速度を落とすことになる。

 日本でもスーパーマーケットなどの広い駐車場ではちょくちょく見るようになったけれど、道路への導入はまだまだ少ない。おそらく先進国でもっともハンプが普及していない国だと思う。

 見通しの悪い交差点での出会い頭事故、自転車や子供の飛び出しなどなど、住宅街にはとても危険な道路が多く、人身事故が多発している。ハンプが普及すれば、こうした事故をかなり防げる。事実、事故多発交差点に試験的に設置したところ、事故が8割減ったという例もある。

 ところが行政はなかなか重い腰を上げようとしない。なぜか? 荷物を載せたトラックがハンプに気付かず速度を落とさず通過すると荷台から盛大な音がする。それに対し付近の住民から苦情が出るというのが最大の理由らしい。

 それもわからないではないけれど、速度を落とさないのはそもそも日本にハンプというものを知らないドライバーが多いからで、普及が進めば自然に速度を落とすようになるだろう。また、ハンプの手前をカラー舗装にする、標識を立てるなど、速度を落とさずに通過するクルマを減らす方法はいくらでもある。そのうえで事故防止効果を訴えれば、住民だって同意してくれるはず。他国ですでに広く普及し絶大な効果を発揮している安全対策を積極的に採用しようとしないのは決して誉められる態度ではない。

 そんななか先日千葉方面の広い道路を走っていたらいきなりハンプが現れ、急減速してなんとか無事パスできた。おそらくゼロヨン族対策なのだろうが、住宅街でもない場所にいきなりハンプを付けるなんて危なすぎる。日本のお役人はクルマのことをまったくわかっていない。


BMW M2 COUPE
BMW・M2クーペ

スポーティーな“M”に、コンパクトモデル登場

 BMWとメルセデスの違いは? と聞かれたら、たいていの人は「BMWのほうがスポーティー」と答えるだろう。その通り。BMWは常に、モアスポーティーという価値観で王者メルセデスと戦ってきた。そんなBMWのスポーティネスが凝縮されているのが、M3やM4、M5といった〝M〟を冠した商品群。そのなかでも、もっともコンパクトなモデルが新たに登場したM2クーペだ。

 ベースとなったのは2シリーズクーペ。2シリーズといえばグランツアラーやアクティブツアラーといったFFミニバンが主力だが、クーペはFR。全長4,475㎜、重量約1.5トンという軽量コンパクトなボディに高性能3ℓ直6ターボを搭載し後輪を駆動するという成り立ちは、クルマ好き、運転好きにとってまさに垂涎の的である。

 試乗の舞台となったのはカリフォルニア州にあるラグナ・セカ・サーキットと、その周辺道路。まずは6速MTで一般道を走ったのだが、スムーズで上質な乗り心地にノックダウンされた。補強したボディに高精度なサスペンションパーツを組み込み、かつ非ランフラットタイヤを履いているためだろう。足はそれなりに固めているのだが、驚くほどしなやかで心地がいい。ハードウェアがこのレベルまで来ると、固いから乗り心地が悪い、柔らかいから乗り心地がいいという常識はもはや通用しない。

 サーキットでは7速DCT仕様に乗った。M4より100㎜以上短いホイールベースに370psの出力、しかも後輪駆動ということでじゃじゃ馬ぶりを予想したが、予想はいい意味ではずれた。抜群のブレーキ性能に加え、フットワークはちょっと信じられないほどにコントローラブルであり、トリッキーなラグナセカで370psを思うがままに引き出すことができた。ピッと芯の通ったエンジンのフィーリングも最高だ。これで770万円は安いと思った。MT仕様の輸入も望みたい。

1985年に登場し、高性能スポーツ・カーのベンチマークを確立した初代「M3」と、’73年に誕生した「2002タ―ボ」の伝統を引き継ぐモデル。高性能な「Mモデル」の中では、入門的な位置付けとなる。新開発の直列6気筒Mツインパワー・ターボエンジンを採用し、サーキットでの究極の運動性能と日常走行における実用性を高次元で両立した。

BMW・M2クーペ

車両本体価格:7,700,000円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,475×1,855×1,410
定員:4人 エンジン:直列6気筒DOHC
総排気量:2,979cc
最高出力:272kW(370ps)/6,500rpm
最大トルク:465Nm(47.4kgm)/1,400~5,560rpm
JC08モード燃費:12.3km/ℓ
駆動方式:後輪駆動

MINI CONVERTIBLE
MINI・コンバーチブル

ミニならではの魅力全開4シーターオープン

 2001年の登場以来、BMW製ミニの累計販売台数は300万台を超え、いまなお年間30万台ペースで増え続けている。とくに経済的でもなければ室内が広いわけでもないコンパクトカーがなぜそこまで支持されるのか。ひと言でいえば「ライフスタイルカー」として秀でているからだ。乗る人のセンスを表現すると同時に、乗る人の気持ちを上げる力がこのクルマには備わっている。

 新たに加わったコンバーチブルは、言うまでもなく、ライフスタイルカーとしてのミニをさらに尖らせた存在だ。ミニならではの個性×オープンカー=圧倒的存在感、である。このサイズでここまで「主張している」モデルは他にちょっと見当たらない。

 巧いなと思ったのがオプションのユニオンジャック柄ソフトトップ。ドイツ人デザイナーいわく「英国の伝統にインスパイアされながら新しい表現を創造していくのがミニづくりの醍醐味です」。この柄、近づくとヘリボーン柄だったりする。本当に楽しみながらつくっているんだろうなと思う。

 ベースモデルのサイズが拡大された恩恵で後席が広くなったのは朗報だ。長距離ドライブはちょっと厳しいが、1~2時間程度なら大人4人でもそこそこ快適に過ごせる。

 電動ソフトトップの開閉は18秒。30km/h以下なら走行中も操作可能で、なおかつフルオープンの他、サンルーフのように一部のみスライドして開けることもできる。ただしサンルーフ状態での風の巻き込みは盛大だ。

 開発目標である「3ドアと同等の走り」はきちんと実現されていた。ハンドリングにしてもボディの剛性感にしてもオープン化のネガはほとんどない。ゴーカートフィーリングは健在だ。日本発売はもうすぐ。2ℓ直4ターボ(192ps)のクーパーS、1.5ℓ直3ターボ(136ps)のクーパー、高性能版2ℓ直4ターボ(231ps)を積むジョンクーパーワークスの3モデルが用意される予定だ。

昨年秋の東京モーターショーにて世界初公開されたミニ・コンバーチブル。トランク容量は先代に比べ25%も拡大、後部座席のスペース改善とあわせ使い勝手がアップした。後部座席の安全装備であるロールオーバーバーは目につかないようすっきりしたデザインに。ソフトトッップのユニオンジャンクは、柄を生地に織り込むアイデアを採用した。

MINI・コンバーチブル

車両本体価格:3,970,000円(MINI Cooper S Convertible、税込)
全長×全幅×全高(mm):3,860×1,725×1,415
車両重量: 1,360kg 定員:4人
エンジン:2.0ℓ直列4気筒MINIツインパワー・ターボ
総排気量:1,998cc 最高出力:141kW(192hp)/5,000~6,000rpm
最大トルク:280Nm/1,250~4,600rpm

ALFA ROMEO 4C SPIDER
アルファ ロメオ・4Cスパイダー

強烈な非日常を味わえる“超”硬派なスポーツカー

 軽くて強靱なカーボンモノコックにアルミ製サブフレームを組み合わせた2シーターミッドシップスポーツ、しかもアルファロメオとくれば、これはもう魅力的でないはずがない。のだが…僕はどうも4Cが好きになれなかった。たしかにスペックはすごい。けれど、イタリア車らしい官能、あるいはアルファロメオらしい色気が感じられない。有り体に言うなら、アルファロメオのバッジを付けたロータス(実際は完全オリジナルだ)に見えてしまうのだ。

 4Cスパイダーにも同じ傾向が見られるが、ルーフをソフトトップに代え、エンジンフード周りのデザインを一新したせいで、ちょっぴり色気が出てきた。これならまあ悪くないなと思いつつ低くタイトなコックピットに滑り込む。ソフトトップは手動で外してクルクルと巻き取りトランクに収納するタイプ。慣れれば2~3分で脱着できるだろう。

 1,750ccという排気量から240psを発生する4気筒は、最新のターボエンジンらしく下から分厚いトルクを出す。トランスミッションは6速DCTだから、イージードライブも可能だ。しかし、4Cスパイダーは気軽に街乗りを楽しむようなクルマじゃない。足はビシッと引き締まり、荒れた路面では内蔵が上下に揺すられる。キャビン内にはエンジンとタイヤの騒音が容赦なく響き渡るし、おまけにステアリングはノンパワーアシスト。アクセルを深く踏み込めばとんでもない勢いでダッシュを始める。そう、こいつは〝超〟が付くほど硬派なスポーツカーなのである。

 こういうクルマに乗る目的はただひとつ。非日常感を楽しむことだ。もちろんワインディングロードに行ってもいいし、サーキットに持ち込めば最高だが、普通に乗っていても、快適性の放棄という代償を払うことで強烈な非日常感を味わえる。ハンパな気持ちで手を出すと火傷する。でも本気で好きになったら最高。4Cスパイダーとはそんなクルマだ。

イタリア・モデナのマセラティ工場にて手作業で生産される4Cスパイダーは、1,060㎏の車両重量(日本仕様)と4.4㎏/psのパワーウェイトレシオでスーパーカー並みのパフォーマンスを発揮する。新デザインとなるヘッドライト「バイキセノンヘッドライト」はエレガント感を強調。ファブリックのルーフは、専用バッグに収納しトランクに格納できる。

アルファ ロメオ・4Cスパイダー

車両本体価格:8,618,400円(税込)
全長×全幅×全高(mm):3,990×1,870×1,190
車両重量: 1,060kg 定員:2人
エンジン:直列4気筒 DOHC 16バルブ インタークーラー付ターボ
総排気量:1,742cc 最高出力:177kW(240ps)/6,000rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/2,100-4,000rpm
JC08モード燃費:12.1km/ℓ 駆動方式:後輪駆動

FERRARI 488GTB
フェラーリ・488GTB

ターボ化がもたらすフェラーリとの付き合い方

 イタリアの至宝フェラーリ。その最新モデルが488GTBだ。458イタリアをベースに大幅な改良を与えた488GTB最大のニュースとなるのが、ターボ化されたV8エンジン。458イタリアの4.5ℓから3.9ℓにダウンサイズしたエンジンは、しかしターボチャージャーによる過給によっておよそ100psアップの670psを発生する。

 とはいえ、200psが300psになったのなら有り難みもあるが、578psが670psになったところで使い切れないのは同じ。であるなら僕は気持ちよさをとりたい。ということで、まずは新しいV8ターボのフィーリングに注目したのだが、うーん、正直フィーリング面は退化したと感じた。もちろん、単体で見れば心の底から素晴らしいエンジンだと言える。パワーもサウンドもレスポンスも最高だ。けれど、麻薬的とも言うべき458イタリアの自然吸気エンジンと比べてしまうとドラマティックさに欠けるのも事実。とくに、トップエンドまで回していったときのクォォォォーンという抜け感には物足りなさを感じた。

 しかし、試乗2日目に都内を走り回っていて別の見方もあるなと感じた。ターボ化によるフラットな中低速トルクと7速DCTは混雑した都内で抜群に扱いやすいのだ。しかも静粛性や乗り心地も上々。なおかつ高速道路で踏めば458イタリアより確実に速い。すべての人とは言わないけれど、フェラーリを買っている多くの人にとって、ターボ化はデメリットよりメリットが大きいのではないか。ふとそんなふうに思った。自然吸気エンジンの咆哮に酔いしれながらワインディングやサーキットを颯爽と駆け抜けるのもフェラーリだが、高くて赤くて派手でカッコよくて速いクルマの助手席に美しい女性を乗せて六本木界隈を流し、そのあと夜の高速へとワープするのもまたフェラーリとの正しい付き合い方だから。ちょっと寂しいが、これが現実だ。

エクステリアデザインは、ピニンファリーナではなくフェラーリ・スタイリング・センターによるもの。かつての名車308GTBのイメージを投影した官能的なデザインで、目を惹く大型のエアインテークはスプリッターによって上下に2分割されている。キャビンは使い勝手を重要視、スポーティーな雰囲気と快適性を備えた。

フェラーリ・488GTB

車両本体価格:30,700,000円(税込)
全長×全幅×全高(mm):4,568×1,952×1,213
車両重量: 1,370kg 定員:2人 エンジン:90°V型8気筒ターボ
総排気量:3,902cc 最高出力:492kW(670CV)/8,000rpm
最大トルク:760Nm/3,000rpm
最高速度:330km/h以上 0-100km/h:3.0秒
駆動方式:後輪駆動(ミッドシップ)

文・岡崎五朗

Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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