岡崎五朗のクルマでいきたい vol.75 VW不正事件とジャーナリストの務め

 VWにとって未曾有のスキャンダルになったディーゼル車の排ガス問題。事の発端となった米国に加え欧州でも不正が発覚するなど、ことはVWの経営、ひいてはメイドインジャーマニーの信頼失墜にまで及びつつある。

 不正ソフトにより排ガス試験時にだけ浄化装置をフルに働かせて試験をクリアし、通常走行時は規制の最大40倍ものNOx(窒素酸化物)を排出する。入試にたとえればカンニングのような違法行為になぜVWは手を染めてしまったのか。真実は今後明らかにされていくだろうが、様々な情報から推測すると、答えはどうやら「燃費」にありそうだ。NOx吸蔵還元触媒を採用したディーゼルエンジンは、ため込んだNOxを処理するため定期的に燃料を多めに噴射する必要があり、その頻度が高ければ高いほど燃費が悪化する。処理時の高温が引き起こす触媒の熱劣化も動機のひとつだったのかもしれない。耐久性の不安がないSCR方式を搭載したモデルにも不正ソフトは搭載されていたが、おそらく還元剤である尿素の消費量を減らしたかったことと、NOx排出量とトレードオフの関係にあるPM(微粒子状物質)を減らし、PM処理時に使う燃料を節約したかったのだろう。かなり専門的な話になってしまったが、いずれにしてもハイブリッドに迫る燃費という謳い文句を実現するために不正行為に走ったというのが、現時点ではもっとも可能性の高いシナリオだ。

 技術ではなく不正でそれを狙った代償は果てしなく大きい。巨額の罰金やリコール費用だけでなく、彼らはユーザーからの信頼という最も大切なものも失った。だが僕は、VW車を全面的に否定するつもりはない。なぜなら、彼らのクルマ作りには素晴らしい部分がたくさんあるから。この先日本に入ってくる同グループのディーゼルエンジンに不正ソフトが入っていないと確認されれば、きちんと評価するのがジャーナリストの務めであるとも思っている。しかし、ときに感情は事実をも消し去る。

 彼らに求められているのは、事実をすべて白日の下にさらし、二度と同じ過ちを繰り返さないと誓うこと。失った信頼を取り戻すには時間がかかるだろうが、とにかくやるしかない。


HONDA SHUTTLE
ホンダ シャトル

5ナンバー枠最大のラゲッジ容量を誇る一台

 新型シャトル。先代は「フィット・シャトル」というネーミングだったが、今回のモデルチェンジでフィットが抜け、従来サブネームだったシャトルが車名になった。フィットの車体をストレッチしたステーションというコンセプトに変更はないのに、なぜネーミングだけ変えてきたのだろう? 開発者に聞いたところ、フィットとフィット・シャトルでは、それぞれのオーナーの使い方や期待するものが違っているから、という答えが返ってきた。フィットはあくまで日常の経済的で気軽な足として使われている。それに対し、フィット・シャトルはレジャーに使われることが多く、より長距離を走るユーザーが多かったのだという。また、約30万円の価格差なりの違いが明確でないことも、フィット・シャトルオーナーの不満ポイントだった。

 そこで、新型では内外装に高級感をもたせたり、長距離ドライブの快適性を引き上げたりしたとのこと。実際、フロントグリルの押し出し感は明らかに高まっているし、専用ダッシュボードやメーターなど、インテリアの上質感も増した。走りについても、静粛性と乗り心地はフィットを凌ぐ。同じフィット派生車で評価すると、フィット<ヴェゼル<シャトル<ジェイドといった仕上がりだ。

 これだけ違えばフィットとの価格差も素直に納得できるし、独立した車名を手に入れたのも当然だと思える。ただし、どうせここまで変えたのならドアも専用にしちゃえばよかったのにとは思う。好きな人もいるのかもしれないが、個人的にこの大袈裟なプレスラインはガチャガチャしすぎていると感じる。

 シャトル最大のポイントにまだ触れていなかった。広大な後席と広大なラゲッジスペースだ。とくに5ナンバーサイズ最大を謳うラゲッジスペースは圧巻。日常的に扱いやすいサイズでありながら、週末には遊び道具をたくさん積み込んでレジャーに活躍してくれる。この素敵な二面性がシャトルの魅力だ。

ラゲッジスペースは、ゴルフバッグが4個入るほどの巨大な収納力を持ちながら、車両自体は小型クラスの駐車場にも収まるサイズ感だという。グレードは、ガソリン1種類とハイブリッド3種類を用意。中でもハイブリッドの燃費は、5ナンバーのステーションワゴンとしてクラストップの34.0㎞/ℓを実現している。価格は1,690,000円(税込)から。

ホンダ シャトル

車両本体価格:2,380,000円(HYBRID Z/FF、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,400×1,695×1,545
車両重量:1,240kg 定員:5人
エンジン:水冷直列4気筒横置 総排気量:1,496cc
【エンジン】最高出力:81kW(110ps)/6,000rpm
最大トルク:134Nm(13.7kgm)/5,000rpm
【モーター】最高出力:22kW(29.5ps)/1,313-2,000rpm
最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1,313rpm
JC08モード燃費:29.6km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

SUZUKI ALTO RAPIN
スズキ アルト ラパン

男性にも勧められる機能に裏打ちされた“真っ当さ”

 フランス語でウサギを意味するラパン。先代は女性専用っぽくて、自分には縁のないクルマだと感じていた。仕事だから拒否はしなかったけれど、小っ恥ずかしさに耐えながらの試乗だったということだ。

 ところが新型はちょっとばかりキャラクターが変わった。依然として隠れミッキーならぬ隠れウサギがいたるところにいるし、マルチインフォメーションディスプレイにはウサギが登場して喋るしと、基本的には女性を強く意識したクルマではある。しかし、ボディカラー選びさえ間違えなければ男性でもイケるのでは? と感じたのである。新型のデザインが、ジェンダーを超えていいなと思えるレベルにまで達しているのがその理由だろう。視覚的な重量を前後のタイヤでしっかりと受け止めるプロポーションや、直線と曲面を上手に組み合わせた質の高い造形は、個性的であると同時に、お洒落さや健康的なイメージを醸しだしている。男性視点でみた場合、フロントグリル中央のウサギのエンブレムだけは勘弁して欲しいが、それ以外はクルマとして実に真っ当なカタチをしている。クラシックミニ的と言えばわかりやすいだろうか。新型ラパンのルックスには、機能に裏打ちされた機械だけがもつ真っ当さが備わっていて、それが男性である僕にもシンパシーを感じさせるのだろう。

 ターボモデルの設定はないが、120㎏にも及ぶ大幅な軽量化は必要にして十分な動力性能を実現。当然ながら燃費もいい。ここまで徹底した軽量化を実施したにもかかわらず、乗り心地や静粛性をないがしろにしていない点にも好感をもった。軽の本質を追究したアルトの長所を保ちつつ、お洒落さや趣味性をグンと底上げしたのが、ラパンというわけだ。

 液晶ディスプレイのウサギが「ハロー」とか「シーユー」とかいちいち喋る機能を設定で無効にできることを知って、僕は新型ラパンをますます気に入った。

箱型フォルムをベースに丸みを加えた「まる しかくい」ぬくもりを感じるプロポーションに、インテリアはソファやテーブルといった“部屋”をモチーフにしたデザインを取り入れ、くつろげる空間を演出した。車両軽量化などにより、燃費は最高で35.6㎞/ℓと大幅に向上。全車にレーダーブレーキサポートをはじめ、先進の安全技術も標準装備されている。車両価格にプラス43,200円(税込)で、写真のホワイト2トーンルーフ仕様にできる(S、Xグレード)。

スズキ アルト ラパン

車両本体価格:1,389,960円(X/2WD、税込)
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,525
車両重量:680kg 定員:4人
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒 総排気量:658cc
最高出力:38kW(52ps)/6,500rpm
最大トルク:63Nm(6.4kgm)/4,000rpm
JC08モード燃費:35.6km/ℓ 駆動方式:前輪駆動

AUDI A4
アウディ A4

フラッグシップに引けを取らない“技術のアウディ”の立役者

 BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスのライバルとして存在感を放つアウディA4がフルモデルチェンジした。来年春の日本導入を前に、ベネツィア近郊で開催された国際試乗会でのファーストインプレッションをお届けしよう。

 外観は相変わらずのアウディワールドだ。奇をてらわずシンプルな装いに仕上げつつ、細部まで入念に作り込まれた質感が、そこはかとない「いいモノ感」を醸しだしている。シングルフレームグリルが6角形になったことが新型の識別ポイントだが、それとてアウディであることを認識する妨げには微塵もなっていない。新鮮味はないけれど、その分、安心感はあるな、という印象をもった。

 むしろ次世代感を強くアピールしているのはインテリアだ。ひとあし先にTTで採用したフル液晶タイプの「アウディバーチャルコックピット」は、現段階において機能的にもデザイン的にも圧倒的に優れた液晶メーターだと断言できる。便利だし使いやすいし、なにより「時代を着る」感覚を強く味わえる。日本メーカーにも頑張ってこれを超えるものをだしてもらいたいと切に願う。

 ガソリン、ディーゼル、FF、クワトロ(4WD)など複数のモデルに試乗したが、共通して言えるのは、空恐ろしいほどの静粛性をもっているということだ。アウディ自身「フラッグシップモデルのA8に匹敵する」と豪語しているが、それは決してビッグマウスじゃない。エンジン音だけでなく、風音やタイヤノイズを含め、A4は驚くほど静かなクルマに仕上がっている。乗り心地やハンドリングも明らかにグレードアップした。ボディサイズやインテリアの豪華さはさておき、中身の実力は兄貴分のA6を確実に超えた。

 「技術による先進」を社是に掲げつつも、最近のアウディはお洒落さばかりが先行し、技術イメージが希薄だった。新型A4によって再び「技術のアウディ」が戻ってきた。

8年ぶりのフルモデルチェンジ。現行モデルより若干サイズアップした一方で、アルミニウムの使用範囲を広げるなどで車両重量を最大120㎏軽量化することに成功。変速機の多段化なども行い、燃費は最良で21%低減したという。エンジンは、3種類のTFSI(ガソリン直噴ターボ)と、4種類のTDI(ディーゼルターボ)を用意、出力は110kw~200kWとバリエーション豊富。TFSIは、1.4ℓと、2.0ℓの標準/高性能バージョンが用意される。

アウディ A4

車両本体価格:未定(2.0 TFSI)
*日本導入は来春の予定
全長×全幅×全高(mm):4,726×1,842×1,427
エンジン:2.0リッター直列4気筒直噴ターボ
総排気量:1,984cc
最高出力:140kW(190ps)/4,200-6,000rpm
最大トルク:320Nm/1,450-4,200rpm

JEEP RENEGAE
ジープ レネゲード

見た目はポップ、中身は硬派 ジープ初のスモールSUV

 レネゲードは、ジープファミリーに属しながらも、ポップなデザインと街乗りに適したメカニズム&サイズをもつコンパクトなクロスオーバーモデルだ。なかにはジープがこの種のモデルをリリースすることに一抹の寂しさを覚える人もいるだろう。1941年にこの世に生を受けたオリジナルジープは、間違いなく自動車史に残る不世出の名車だ。その偉大さは、何よりジープに影響を受けて登場したクルマの数多さが如実に物語っている。パジェロもランドクルーザーもレンジローバーも…オフロード4WDと分類されるクルマはすべてジープの末裔と言えば、その影響力の大きさを実感できるはず。第二次大戦後には民生用として販売されたが、ミリタリースペックならではのタフネスさと悪路走破性がジープ最大の特徴だった。そういう意味で、乗用車ベースのプラットフォームでFFモデルも用意したレネゲードは、筋金入りのジープファンにしてみれば許しがたきクルマかもしれない。

 しかし、僕はこういうアプローチも大いに「アリ」だと思う。ジープから受け継いだのが7スロットグリルだけだったら違う意見になったいだだろうが、実際に眺め、乗ってみて、レネゲードにもジープらしさがちゃんと備わっていることを確認できたからだ。ポップさのなかにジープらしいゴツさを表現したインテリアもさることながら、ボディのガッチリ感や4WDモデルの悪路走破性へのこだわりはそうとうなもの。雰囲気だけを楽しみたいならFFモデルを選べばいいが、中身にもジープらしさを求めるなら4WDを選ぶといいだろう。

 試乗当日、ドイツ人のチーフデザイナーと話したのだが、彼は生粋のジープ好き。エンジニアにもジープファンが多いという。なるほどなと思った。クルマをつくるのは人。たとえ見た目は軟派でも、ジープ好きがつくったジープはやはりジープらしくなるのだ。

エクステリアは、伝統の丸いヘッドライトと7スロットグリルなどの“ジープらしさ”を受け継ぎつつ、ポップさが際立つスタイリング。内装はジープ伝統のアイコンを多数採用、無骨でタフなイメージを表現する一方、エクストリームスポーツにヒントを得た遊び心あるデザインも散りばめられている。グレードは3種類で、価格は2,970,000円(税込)から。最上グレードのトレイルホークでは、オプションでオープンルーフも選べる。

ジープ レネゲード

車両本体価格:3,402,000円(トレイルホーク/4WD、税込)
全長×全幅×全高(mm):4,260×1,805×1,725
車両重量:1,560kg 定員:5人
エンジン:直列4気筒 タイガーシャークマルチエア16バルブ
総排気量:2,359cc 最高出力:129kW(175ps)/6,400rpm
最大トルク:230Nm(23.5kgm)/3,900rpm
JC08モード燃費:10.4mk/ℓ 駆動方式:4輪駆動

文・岡崎五朗


Goro Okazaki

1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイト『Carview』などで活躍中。現在、テレビ神奈川にて自動車情報番組 『クルマでいこう!』に出演中。

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