オンナにとってクルマとは vol.56 チャイルドシート迷子

 マタニティ・カーライフは無事に終わりを告げ、新米ママ・ライフがスタートした。

 てんてこ舞いの日々が続く中、ふと思うのは「免許を取ってから20年あまりの間に、こんなに長いこと運転をしないなんて初めてだなぁ」ということ。ひとり気ままなドライブなんてできるのは、何年後のことだろう。次に運転をする時には、チャイルドシートのお世話が必須になる。

 我が子のチャイルドシートデビューは、産院から帰る時だった。取り付けは国際規格となっているISO-FIXで、クルマ側のアンカーにカチッとチャイルドシート側の金具を差し込めば、簡単に確実に装着できてイイ感じ。水平に寝かせるための新生児用のパッドも付けたし、これで完璧と思っていたら肩ベルトの長さ調節を忘れており、それに手間取っているうちにギャーギャー泣かれてしまった。ちょっとホロ苦いデビューだ。

 これまで甥っ子・姪っ子をさんざん乗せてきたし、チャイルドシート指導員という資格も持っているし大丈夫、という慢心がいけなかったと反省して、注意点などをおさらいした。肩ベルトは後ろ向き装着の場合、ずり下げ防止のために肩より低い位置で締め、前向き装着の場合は飛び出し防止のために肩より高い位置で締める。そして締める強さは、子どもの背中とクッションの間に大人の手のひらが入るくらいが適切だ。こういうことは、うっかり忘れがちなので復習してよかった。

 それにしても今回、実際にチャイルドシートを購入してみて、あまりの環境の悪さに愕然とした。事前にウェブサイトなどで商品のスペックを見たり、衝突安全などの試験を行っているJNCAPの評価を見たりして、候補をいくつかピックアップ。現物を見て比較検討したいと思ったけれど、都内ではすべて揃うお店は見つけられず、4軒まわった。しかもお店で店員さんにアドバイスを求めると、「人気のあるのはこちらです」とか、とても安全装備を薦めるとは思えない言葉ばかり。商品の札にも安全性についての表示はないし、聞くと「どれも基準はクリアしています」と返ってきた。

 前々から、JAFの調査などでチャイルドシート装着率の低さや、装着していても不適正な取り付けが多い結果が出ており、原因とされたのは親の安全意識の低さだ。でも、絶対にそのせいだけじゃないと実感した。いま必要なのは、多くの商品を手に取ることができ、的確なアドバイスがもらえるお店や、自分のクルマへの取り付けや子どもの乗せ方をしっかり練習できる場。それがあれば、守れる小さな命はもっともっと増えると思う。

文・まるも亜希子

Akiko Marumo

自動車雑誌編集者を経て、現在はカーライフジャーナリストとして、雑誌やトークショーなどで活躍する。2013年3月には、女性の力を結集し、自動車業界に新しい風を吹き込むべく、自ら発起人となり、「PINK WHEEL PROJECT」を立ち上げた。

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