FEATURE1 金田のバイクの決定版〜電動バイクzecOOゼクウ

 「なんとか間に合った!」

 マンガやアニメの『AKIRA』に魅了された人なら、このバイクを見てそう思うことだろう。2020年、マンガと同じく東京オリンピックが開催されると来れば、「じゃあ〝金田のバイク〟はどこだ!?」と、言いたくもなろうというものだ。

 そりゃあカタチだけならいくらでも模したものがあった。250ccのバイクや大型スクーターをベースに、かなり再現度の高いものが市販されていた記憶もある。でも、僕たちが望んだものは、別にコスプレしたバイクではなかったはずだ。

 主人公の金田が駆る近未来のバイクは、どんなバイクにも似ていない、それでいてバイクらしいワイルドさも失っていないバイク乗りのハートに響いたものだったからだ。まさに「バイクの未来はこうだ!」というビジョンを叩き付けた。僕たちが欲しかったのは、バイクそのものよりも、あんなバイクが疾走する未来だったのだ。

 このバイクの名は『zecOO(ゼクウ)』見た目だけでなく中身も新しい。ちゃんと電気で動くバイクなのだ。ほとんどハンドメイドで作られるため、値段はそれなりに高い。おいそれと買えるものではない。しかしポルシェやフェラーリを買うつもりになれば買えなくもない。今の自分には、買える買えないでいえばそりゃ買えないけど、zecOOの対価が決して高すぎるとは思えない。部品のクオリティや先進性も考えれば、むしろお買い得とすらいえるほどだ。

 アニメから抜け出たようなそのスタイリングに好みはあるだろうが、このスタイルが未来を感じさせることに異論はないだろう。特徴的なハブセンターステアリングを採用したフロントスイングアームや左右独立して操作するセパレートハンドルを見れば、良くも悪くも成熟していたはずのバイクのデザインが、電動バイクで新たな自由度を持てるんじゃないかなと思わせる。

 まあでも、難しいことは抜きにして単純にカッコいいのだ。燃費がいいとか、環境に優しいとかじゃなくて、新しくてカッコ良いからを理由に電動モーターを搭載するバイクがあったっていいじゃないか。最新技術ってのは本来、人をわくわくさせるためのものだろう。

 今回は製作した人と直接話したわけじゃないから、2020年の東京オリンピックを意識していたのかとか、アニメの『AKIRA』のファンだったのかまでは聞けなかった。でもきっと、わくわくする未来に手を伸ばして、少しでも近づこうとして、この新しいバイクをカタチにしたはずだ。

 放っておいても時間は経つし、次の日はやって来る。でもそれは未来じゃない。こうありたいと願い、そこへ向かう意志があってこそ、未来が作られて行くのだ。僕はそう思う。『AKIRA』の舞台は東京オリンピックを控えた2019年。この2015年にzecOOが存在するという現実に、改めてあのときの未来に間に合った、という思いが強まる。

文・山下敦史

zecOO

車両本体価格:¥8,880,000 ※要問い合わせ
(消費税別・登録諸費用別)
全長:2,450mm 全幅:800mm 全高:1,180mm
普通二輪(中型二輪)免許で搭乗可
問い合わせ先:オートスタッフ末広
TEL:043(261)0184
mail:info@zecoomotor.com
www.zecoomotor.com

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