ahead Vol.63 FEMME SPECIAL
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星に願いを Make a wish upon a star

1年で一番星の美しい時期。オリオン座しか見えない都心を抜け出して、高速道路に乗る。1時間も走れば、たくさんの星座を指折り数えられるほど賑やかな夜空に出会えることを知っているだろうか。温かいジャケットに、ブランケットと手袋と、できればポットにコーヒーをたっぷりと用意して、たまには気のおけない誰かと特別な一夜を過ごしたい

文・若林葉子 写真・桐島ローランド

星に願いを Make a wish upon a star

東京から約1時間。クルマで一路、御殿場へ向かう。今夜は久しぶりに星を見るのだ。助手席に座る同僚のSは、本来の目的である星よりも、初めてのオープンカーに少々興奮気味。

オープンカーで星、は冬の贅沢の極みであるかもしれない。温かなヒートシーターに気を良くし、一気にアクセルを踏み込んだ。

星にまつわる思い出といえば、幼い頃に見た、夏の夜の天の川だ。星の数よりネオンの方が多いという環境で育った私にとって、あれは鮮烈な体験だった。場所は母の田舎である秋田。一緒に夜空を見上げた兄や妹、そして手をつないで隣に立っていた祖母の上品な横顔までが、宝石のような星たちのきらめきとともに瞼の奥にやきついている。

30歳を過ぎて、はるかモンゴルの地で、周囲360度全てを星に囲まれた夜ももちろん感動したけれど、幼い頃の天の川には及ばなかった気がする。

隣ではしゃいでいるSは数年前に若くして父親を亡くした。天に召された真冬のその夜、空にはたくさんの星が輝いていたそうだ。葬儀の日は、命日にも増して空気は澄み、何とふたご座流星群が夜空を飾ったという。「父の星座はふたご座だったんです。遠い空から父を迎えに来てくれたんだと今でも本当にそう思っています」。

だから今、彼女の父は夜空の星となっていつも彼女を見ているはずだ。

人に話したら変な顔をされたけど、星を見に行く時の感覚は故人の魂と相対する時と似ているなぁと思う。私の場合、先祖代々の墓所は大阪にあって、そうしょっちゅうは行けないのだが、それでも割合まめに足を運ぶ。それは自分にとって節目と感じられる時。かわいがってくれた祖父に会いに行くのである。

その時、辺りを包む清明な空気。自分の心の奥の方が何かと呼応するような厳かな感覚。それは少し遠出して星空を見上げた時の感覚とまさに同じ。どちらも明らかに日常から一線を画した尊い感覚だ。