文・世良耕太 写真・& roll

アルミホイールはクルマの重量を支えたり、タイヤを通じて動力を路面に伝えたりする機能部品ではあるが、靴が単に足を保護する道具にとどまらないのと同じように、所有者の好みやセンスを反映する。つまり、機能だけでなく見栄えも重要。
ENKEIの新製品『Racing RS05』は、シルバー塗装にとことんこだわったアルミホイールである。エンケイ株式会社 デザイン企画室の原 敬明さんは、シルバーにこだわった理由について、「スタンダードなカラーで、欧州のプレミアムなカーメーカーやチューナーが採用しているホイールに迫りたい思いがあったからです」と打ち明ける。続けて「日本ではガンメタ系や暗めのシルバー、それにスパッタリング(光沢塗装の一種)がもてはやされていますが、全世界で販売するENKEIブランドの商品としては、世界のどこに出しても恥ずかしくない品位の商品にしたいという考えがありました」と付け加えた。
1層目は下塗りのクリア、2層目に通常のシルバー、3層目は再びクリアで、4層目にメタリック感の強いシルバー、5層目にクリア、6層目に高純度のパウダーコートクリアを施し、それぞれの層を施すごとに焼き入れを行って強化する6コート6ベイクの非常に手間のかかる工程を費やして仕上げる。プレミアムセグメントに属するクルマのボディー塗装と同様のこだわりである。
塗膜を重ねることは深みを出すことにつながる。シルバーの元となるミクロン単位のメタル成分を顔料に対してどのように配合するかも、見栄えを決定づける重要な要素。相当な試行錯誤の末に、世界を相手に勝負できる新しいシルバー色が完成した。
「トップコートが厚いとツルツル感は出ますが、透過性が落ちるため、下に塗った色が本来の色と違って見えてしまうことがあります。今回採用したパウダーコートクリアは、厚膜のツルツル感と下塗りのシルバーを忠実に再現する透明感を両立させています」。
名付けて「キアロシルバー」。中世の絵画や木版画に用いられた「キアロスクーロ」(chiaroscuro:イタリア語で「明暗」)という技法からの引用である。明るめの発色でありながら、重厚さを感じさせる仕上がりが新鮮。「上辺だけでなく、本質を突き詰めたかった」という開発者の思いが伝わってくる。