日産リーフがもたらしたもの

 「電気自動車に乗る時はね、いつもエンプティーランプが点灯しているような気分になる。

 だって、『今ここで充電がなくなったらどうしよう』って、そのことばっかり気になっちゃうもんだから、常に充電残量をチェックして、ドライブを純粋に楽しめない。クルマ好きにとって、そしてドライブ好きにとって、コレが一番の苦行。だから、電気自動車が完全に普及するには、まだまだ時間がかかると思うんだよね」 そう言った人がいた。そしてその何気ない会話を今でも覚えているのは、その台詞に私自身、深く納得したからだし、言い得て妙だと思ったからだ。でもとある別の友人はこうとも言う。「一回電気自動車を持ってしまえば、こんなに素晴らしいものはない。だって毎日、普通に家に帰ってコードを差し込めばそれで終了。ガソリンスタンドに行かずとも、翌朝には満充電で走り出せるんだから! これは驚異的な時短だし、しかも電気はガソリンに比べて驚異的に安い。なによりモーターのトルクフルな加速はとてもエキサイティングだしね」 そう、もちろんそれも知っている。リーフ含め、今販売されているピュアEVだけをカウントしても、それらは決して退屈なだけのエコカーではない。内燃機関を持つ自動車にはない、鮮烈な〝愉しさ〟をも持ち合わせているのが今のEVだ。

 そんなふたつの意見の、私たちはちょうど中庸でそれを観ている。このブーム(と敢えて言うけれど)がどこに着地するのか、それを見守っている。しかし、初代リーフはここに〝参加する〟、というカードをユーザーに提供した。つまり〝どんなもんだか乗ってみたいな〟的な人々を驚異的な低価格で引き込んで来たのだ。さらに、これはメーカーにとって有り難いことではないかもしれないけれど、今、中古市場には初代リーフがかなりの安値、場合によっては200万円を切る価格帯で出て来ている。これもむろん元値が安くないと叶わないことであって、つまりリーフはあらゆる意味でEVの玄関口として広い門戸を一般家庭に開いたのだ。そして門戸を開くことで得た販売台数およびユーザー数は、そのまま膨大なデータとなって日産の、ひいてはEV技術のベーシックを進化させる存在になり得る。手の届かないものをお茶の間に提供した、何よりもそれがリーフのもたらしたイノベーション、そして功績だと思う。

 さらに日産は先日、今年末から開幕するフォーミュラEのシーズン5に参戦することを発表した。レースからしか得られないデータを生かして、日産はリーフのまさに葉を、ひいては枝を幹を、大きく育てることになるのだろう。

文・今井優杏 写真・鈴木広一郎

日産リーフ

車両本体価格:3,990,600円(G・2WD、税込)
車両重量:1,510kg
車両総重量:1,785kg
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
総電圧:350V
総電力量:40kWh
最高出力:110kW(150ps)/3,238 〜9,795rpm
最大トルク:320Nm(32.6kgm)/0 〜3,283rpm
交流電力量消費率(JC08 モード):120wh/km
一充電走行距離:400km
定員:5名
*写真はラインオプション¥313,200(税込)と
ディーラーオプション¥171,714(税込)装着車。

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