FEATURE1 61%も事故率を低減したアイサイト

 「どんなに高性能な安全技術でも、それが普及しなければ意味がない。普及させるには、ユーザーの実費負担を最低限にすることが必須条件だ」

 以前、スバルの安全技術開発者は、アイサイト実用化に向けてスタートした動機をそう語ってくれた。

 実際、アイサイトが登場するまでは、他社の先進安全技術を搭載した装備はオプション価格で100万円オーバー。「使うかどうかも分からない装備に、軽自動車が買えるほどのお金を払う人がどれくらいいるのだろう」と思ったのを覚えている。

 そんな中、アイサイトの前身ともいえるADA(アクティブ・ドライビング・アシスト)が登場したのが1999年、名称がアイサイトとなったのが2008年。高コストなレーザーレーダーではなく、ステレオカメラ式を採用してコストを抑えながら、追従クルーズコントロール、車線逸脱警報、車間距離警報を実用化し、自動車業界を驚かせた。

 爆発的にその名が知られることとなったのは、2年後にバージョン2へと進化し、全車速追従クルーズコントロールや衝突回避ブレーキを搭載した頃だ。「ぶつからないクルマ?」のテレビCMも大きな話題となり、エクストラコストにして約10万円という低価格も功を奏して、装着率はぐんぐん伸びた。当時、他社販売店にも「アイサイトありますか?」と来店する客が少なからずいたというほど、一気に認知度を上げたのだった。

 その後、約3年でアイサイト搭載車の販売台数が10万台を突破。装着率は多くのモデルで8割超。これを見て他社にも、先進安全装備の低価格化、標準装備化が広がり、今では軽自動車でも「付いているのが当たり前」になっている。

 しかしその効果は果たしてどれほどのものなのか。本当に事故は減っているのか。目に見える数字や裏付けが欲しいとの声が上がり始めていたところに、スバルは2010~2014年度に販売したアイサイト搭載車、非搭載車の事故件数を公開した。それによるとアイサイト搭載車は、非搭載車に対して事故率が61%減っている。車両同士の追突事故では約8割減、対歩行者事故では約5割減と、近年急増している歩行者の事故にも効いているのが、早くから歩行者検知に力を入れていたアイサイトらしい。

 ユーザーからは、「アイサイトがなかったら、自転車をはねていたので大変助かりました」などの感謝の声が後を絶たない。このデータ公開によって、他社も含めこうした安全技術へのユーザーの信頼度が確実なものとなり、さらに装着率はあがるだろう。将来的には、装着車の任意保険割引や税金軽減など、新たなサービスにつながる可能性もある。

 アイサイトは事故率を減らすと同時に、日本人の安全への意識も大きく変えた。スバルは、事故なき社会の実現に向けて、さらに高い意識を持って安全技術をリードしていくはずだ。

文・まるも亜希子

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